【内田雅也の追球】「足止め」後の「足攻め」

[ 2025年10月26日 08:00 ]

SMBC日本シリーズ2025 第1戦   阪神2―1ソフトバンク ( 2025年10月25日    みずほペイペイD )

<ソ・神>3回、一塁走者の周東に繰り返しけん制球を投じる村上(撮影・大森 寛明)
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 当代一と言える俊足走者、周東佑京を一塁に背負い、阪神・村上頌樹は警戒を強めていた。3回裏1死である。

 再三再四、けん制球を放り、一塁にくぎ付けにしたのだ。順に書きだしてみる。符号は、○=見逃しストライク、●=ボール、ケ=けん制。

 ▽柳町達 ケ●●ケ○○ケケケ○=見逃し三振
 ▽近藤健介 ケ●○○ケ○=見逃し三振

 セットに入ってからボールを長く持ち、けん制球を交えながら3、4番を連続三振に切った。打者2人に9球を投げる間に7球もけん制球を放っている。走者を警戒しながら、打者への集中力を失わなかったわけだ。

 注目したのは柳町も近藤も結局1度もバットを振らなかった点である。いや、村上と坂本誠志郎のバッテリーが“振らさなかった”と言える。

 打者は周東の二盗を待っていた側面もあろう。ただ、長い間合いや再三再四のけん制で焦らし、打者の集中力をそいだと言える。決め球は2人とも外角から入る「バックドア」カッターだった。

 村上―坂本はクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦(今月15日・甲子園)で同様の「しのぎの手筋」を使ったと書いた。毎回ピンチながら、5回無失点で踏ん張った。

 阪神でも監督を務めた野村克也が「ピンチでは球数と時間を使え」と教えた。教えは代々引き継がれ、今は息子の野村克則がバッテリーコーチとしてベンチにいて、時にサインで指示を出す。

 村上の今季盗塁阻止成績は企図11―許盗塁10で1度しか刺せていない。周東には1回裏1死一塁で二盗され、近藤中前打で先取点を失っていた。再び盗塁を許せばシリーズの今後にも響く。重要な「足止め」だった。

 一方で、相手先発の有原航平も今季、盗塁企図17―許盗塁13。走れる投手だと踏んでいたろう。

 6回表の逆転は「足」が生きた。先頭の近本光司が中前打で出て二盗。中野拓夢の三塁線バントは内野安打となり一、三塁。さらに中野二盗で無死二、三塁をつくった。

 相手内野陣は深く守り「内野ゴロでOK」となった。森下翔太は追い込まれながら三振を避けるスイングで遊ゴロを転がし同点。1死三塁で佐藤輝明は「外飛(犠飛)でOK」となり、3ボールから右中間へ打ち上げ、決勝二塁打した。「足攻め」は打者を楽な気持ちにさせる効果があったのである。 =敬称略=
 (編集委員)

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