【内田雅也の追球】士気を高める練習

[ 2025年9月26日 08:00 ]

投内連係で軽快な動きを見せる大竹(手前)ら阪神の投手陣(撮影・後藤 大輝)
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 アップ、キャッチボールが終わると、予想していた通り、投内連係が始まった。甲子園球場での全体練習である。

 今月7日に早々とリーグ優勝を決めた阪神は日々、レギュラーシーズンの残り試合を消化しながら、クライマックスシリーズ(CS)、そして日本シリーズに向かっている。ただ、この消化試合でシリーズに備えるのは案外と難しい。

 「もうシーズンは終わっていますからね」と監督・藤川球児も話している。勝利を目指す戦いはひとまず終えてしまっているからである。

 最近の試合ではバントやヒットエンドランなどの作戦の失敗が目立っていた。本来の持ち味を見失いがちである。

 この辺で一度、原点を見つめなおし、気持ちを引き締めたい。原点とは藤川が繰り返し唱えてきた「凡事徹底」である。

 そのために行った投内連係ではなかったか。先に“予想通り”と書いたのは、こうした選手同士の連係が必要な練習こそ、最も団体競技の野球らしいからである。キャンプでも初日から組み込んでいる。原点にかえるには格好の練習だった。

 一、二塁でのバント処理(三塁封殺)、一、三塁でのセーフティースクイズに対する一塁手チャージ(本塁刺殺)……などに時間を割いた。

 バックネット前で最後まで見つめた藤川はベンチに座り、番記者と雑談となった。残り4試合はCSへの準備とするのかとの問いかけに「試合では難しいですね」と答えた。「個人タイトルの絡みとかあって、なかなかできません。だから、練習でやるんです」

 なるほど、練習でこそ士気を高めることができる。あの1985(昭和60)年、当時監督の吉田義男はオールスターブレーク中、甲子園で「原点にかえってきっちりした練習をしよう」と声をかけ、「いい練習ができた」と優勝への予感を抱いたと話していた。

 「凡事徹底」が信条だったイエローハット創業者、鍵山秀三郎は福沢諭吉が孔子の「鄙事(ひじ)多能」を教えとしていたと紹介している。1993年の講演をまとめた、その名も『凡事徹底』(致知出版社)にある。「鄙事、つまり普通の人たちが雑事と片づける細々としたことに対して、いつも多能で器用でなければいけない」

 阪神が出る本番まで、あと19日。練習の時間は十分ある。 =敬称略=
 (編集委員)

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