【内田雅也の追球】全力で応える「責任」

[ 2025年7月31日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―0広島 ( 2025年7月30日    甲子園 )

<神・広>2回、秋山のライナーを捕球し、素早く一塁へ送球する小幡(撮影・後藤 正志)
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 マジック点灯について阪神監督・藤川球児は「全く知らなかった」と言った。「われわれは常に全力でやります。ファンの方と盛り上がっていきたい」と話し「今日はファミリーデーですから」と笑顔を浮かべた。

 夏休み恒例の『Family with Tigers』3連戦である。球団として「将来を担う子どもたちとその家族がタイガースの試合をキッカケに笑顔あふれる毎日を送ってもらいたい」との思いから3年前に始めたイベントである。

 場外には迷路など遊び場を設けた。試合前練習に家族を招待し、特別なグッズをプレゼントしている。スタンドには親子連れが目立った。

 藤川は「今日しか見られない子どもさんもいるでしょう」と話していた。かつてはON(王貞治、長嶋茂雄)が心がけたプロの姿勢である。

 イチローもアメリカ野球殿堂入り式典のスピーチで語っていた。「ファンが貴重な時間を使って試合を見に来てくれる。選手にはその期待に応える責任があります。開幕戦からシーズン最終戦まで、私は常に同じ姿勢で臨む義務があると思っていました」

 そんな全力プレーが随所に見られた。2回表1死満塁。ライナーを捕球した小幡竜平の一塁送球は文字通り矢のようで併殺に仕留めた。佐藤輝明は5回表に三塁線、三遊間、9回表に三遊間と難ゴロを処理して見せた。子どもたちが望んだ本塁打は出なかったが、目に焼きついたろう。

 不調に見えた先発・村上頌樹は「守備に助けてもらいながら」と6回まで無失点と踏ん張れた。この助け合いの姿勢こそ野球の美点だ。イチローのスピーチにもあった。「野球は私に“何が大切か”という価値判断を教えてくれました。それは人生や世界を見る私の視点をつくってくれたのです」。子どもたちも自然と学んだのではないか。

 つまり、猛虎たちはプロとしての「責任」を果たそうと懸命だったわけだ。思えば、藤川がいま繰り返す「ファンとともに」という姿勢は猛虎魂そのものである。

 前OB会長・川藤幸三は日本一となる1985年の夏、「ミスタータイガース」藤村富美男に呼ばれ、直立不動で聞いた。「わしらが長年やってきたのは誰のためでもない。ファンのためや」。創設90周年の伝統を子どもたちに見せられた夜だった。 =敬称略=
 (編集委員)

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