【内田雅也の追球】「スミ3」で勝てた理由

[ 2025年6月22日 08:00 ]

交流戦   阪神3-0ソフトバンク ( 2025年6月21日    甲子園 )

<神・ソ(2)> 5回、秋広の打球を好捕する森下 (撮影・亀井 直樹)  
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 日本代表監督としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝に導いた栗山英樹が「流れ」を失う要因としてあげていたのが「走塁死」と「併殺」だった。日本ハム監督時代の2015年11月に出した著書『未徹在(みてつざい)』(KKベストセラーズ)に記している。

 たとえば、2死二、三塁で2点打を放った打者が一塁に残る。俊足である。<盗塁させてみてはどうか>と心が動く。

 だが<こういうときはあえて走らせないこともある>。恐らく「走るな」と赤信号のサインを出すのだろう。なぜか。

 <走塁ミスは試合の流れを変える危険性があるからだ。せっかく2点取ったのに、勢いでいかせてアウトになったら、こちらに傾いていた流れを自ら手放してしまうことになりかねない>。

 これは論理や統計ではない。長年、監督を経験して得た勝負勘である。

 この日の阪神で似たような局面があった。1回裏に3点を先制。2回裏先頭で近本光司が右前打で出た。続く中野拓夢の初球、近本は走り、盗塁失敗に終わった。先の例でいえば、流れを失うかもしれない憤死である。

 初回の3点だけで追加点を奪えなかった。つまり「スミ3」で勝った阪神だが、こうした拙攻が何度もあった。それでも流れを相手に渡さなかったのはなぜだろう。振り返れば、拙攻直後の守備で必ず好守があった。順に記してみたい。

 ▽2回裏、近本盗塁死→3回表、先頭・牧原大成の二遊間ゴロを小幡竜平が好守で間一髪アウト

 ▽3回裏、坂本誠志郎三ゴロ併殺打→4回表、小幡が三遊間ゴロを好守

 ▽4回裏、大竹耕太郎が送りバント失敗→5回表2死、森下翔太が左翼前飛球を好捕

 ▽8回裏無死一塁、小幡が送りバント空振りの後、併殺打→9回表1死一塁、三塁線ゴロを高寺望夢が好守

 どの好守も安打になってもおかしくない打球だった。そして安打ならピンチが広がり、失点につながる危険性があった。

 盗塁死、併殺打、バント失敗など嫌な失敗で失いそうな流れを、ことごとく好守で引き戻してきたのである。むろん投手陣の好投もある。

 あえて言えば守り勝ちで、そして不思議の勝ちかもしれない。<答えがないから面白い>と先の書で栗山は書いている。

 夏至だった。流れの正体を知るにはあまりの短夜である。 =敬称略=
 (編集委員)

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