【内田雅也の追球】「ストロング」を目指す船旅の第一歩 開幕前日の姿に気負いはない

[ 2025年3月28日 08:00 ]

LED照明の下で守備練習をする阪神ナイン
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 マツダスタジアムでの開幕前日練習は午後5時から、雨のなか行われた。オフシーズンに内外野の芝を張り替え、照明はLEDになった。新装なった球場を知らない阪神としては少しでも慣れておきたかった。

 外野ノックでゴロを処理した原口文仁が「あまりスネークはしませんね」と外野守備走塁チーフコーチ・筒井壮に話しかけていた。芝の具合で打球がへびのように左右に動く嫌なバウンドはないようだ。打球が照明の光と重なる心配についても森下翔太が「全然大丈夫です」と答えていた。

 マウンドや塁間走路など土の部分はシートが敷かれ、立ち入り禁止。フライを追いながら「入るな」の声で立ち止まる。雨脚が強まり、土砂降りのなか打球を追う選手たちは、どこか野球少年のようで楽しそうだった。穏やかで和やかだった。

 もちろん、目に見えないところで、開幕前日の興奮も緊張もあるだろう。それでも、とりわけ特別な日を迎える気負いはないように映った。

 それは監督・藤川球児が目指すあり方ではないだろうか。沖縄でのキャンプを打ち上げた1カ月前(2月28日)、「感情が揺れ動かないようなチーム作りをしたい」と話していた。「本当のアスリートは多少の物事では揺れ動かない精神状態を心がけていたし、そうなった時が最も強い」

 大リーグの名フロントマンだったサンディ・アルダーソンの言葉を思い返す。相当な準備をしていても好不調の波はあり、先が見通せない現実がある。ならば、どうあるべきか。ジョージ・F・ウィル『野球術』(文春文庫)にある。「常に浮かれ過ぎず、落ち込み過ぎぬように、というベースボールの古い警句は、つまり平常心を保てということだ。いつだって一寸先は闇なんだから」

 藤川はまた、オープン戦を終えた今月23日には「シーズン中もチームを作り上げる作業がある。開幕日が一番いい状態ではなくて、最後に一番いい形を迎えることを考えている」と語っていた。

 自身が大リーグ時代に聞いたという「フィニッシュ・ストロング」である。仲間同士でかけ合う言葉で「最後までがんばろう」「力強く終わろう」といった意味だ。最後に勝つ者になろうという決意とも受け取れる。

 「一寸先は闇」の長い船旅。「ストロング」を目指してこぎ出すのである。 =敬称略=
 (編集委員)

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