【選抜100年 世紀の記憶(5)】松井氏に単独インタビュー 「ゴジラ伝説」ラッキーゾーン撤去1号弾
「選抜100年 世紀の記憶」第5回は、広くなった聖地で大暴れした怪物に迫る。1992年、甲子園からラッキーゾーンが撤去されて迎えた64回大会。星稜(石川)の松井秀喜は“撤去1号”を皮切りに2試合で大会タイ記録の3本塁打を放ち、「ゴジラ」の異名を付けられた。この大会の全アーチ6本(ランニング本塁打1本除く)中、実に半分を1人で記録した衝撃。本紙の単独インタビューに応じた松井氏が、32年前の春を振り返った。 (大林 幹雄)
2万3000人。歴史的アーチを見届けた観衆だ。開会式直後の試合としては少ない。「私鉄のストライキとぶつかった記憶があります。スタンドにあまりお客さんがいなかった」と松井氏。雨で1日順延となり迎えた、3月27日の宮古(岩手)との初戦。阪神、阪急など大手私鉄がストライキを行い、連日の雨にも見舞われた。
1―0の3回2死二、三塁。相手バッテリーは敬遠策を選ばず、勝負を選択。1ボール2ストライク、直球を叩いた打球は右中間フェンスを軽々越えた。
「覚えていますよ。ライナー気味でバックスクリーンの右側に入りました。いい当たりでしたね」。2本目も右中間へ3ラン。こちらは「詰まって高く上がって、あの時は風が珍しくレフトからライト方向に吹いていた。通常の浜風だったら、たぶん入っていないと思います」と会心の当たりではなかったにもかかわらず、スタンドに飛び込んだ。
4月1日、堀越(東京)との2回戦では第4打席に右越え2ラン。一塁側アルプススタンドに向かって、跳び上がって両腕でガッツポーズを見せた。
「堀越のピッチャーは凄く良くて、3打席抑えられたんです。カーブをホームラン打ったのかな。あの頃はやっぱり、そうやって感情が出るんです(笑い)。高校生の頃は」
この試合、堀越で遊撃を守っていたのが、1学年下の井端弘和(現侍ジャパン監督)。間近で見届けた2ランの打球音を今でも覚えており、昨年11月、「金属バットの音じゃなかった。“ベコッ”といった」と証言した。
この大会最大の注目スラッガーの初戦は、適時打も含め1試合7打点で84年の桑田真澄(PL学園)に並ぶ当時の選抜記録。1大会3本塁打は同じく84年の清原和博(同)らの選抜記録に並んだ。
「自分の中で認識はなかったです。(報道陣に)そう言われて、うれしいなとは思いましたけどね。高校生ですし、KK世代を小学校時代に見ていた人間としては、そう言われればうれしいですよ」
準々決勝で天理(奈良)に敗戦。わずか3試合で2つの記録を達成し、広くなった甲子園で強烈なインパクトを残した。前年の91年大会は合計18本塁打で、92年は7本塁打だった。しかも、1本はランニング本塁打。柵越えアーチの実に半分を、1人で放った。
新聞紙上では、「怪物」「北陸の怪童」などの形容だったのが、この大会から「ゴジラ」の愛称が付いた。当の本人は「誰も呼んでいないのに、いきなりゴジラと書いてあるのに笑いましたね。“チームメートもみんなゴジラと呼んでいる”と書いてあって。誰も呼んでないよ、と」と苦笑交じりに回想した。
3年時は主将。チームとしては、広くなった甲子園への対策として、外野を抜かれた後の中継プレーの練習を増やしたという。ただ、「打者・松井」として考えることは変わらなかった。
「ちゃんと当たればホームランになるとは分かっていた。2年生の時(夏の竜ケ崎一戦)も、右中間に結構大きいホームランを打った記憶があったので。ちゃんと当たればちゃんと入るという意識がありました」
吉兆もあった。雪深い地元の石川県では実戦を行うことができず、大会前、なかなか調子は上向かなかった。しかし、初戦の2日前にあたる3月25日、西宮球場でのシート打撃で右越えに本塁打を放った。「山下(智茂)監督が打撃投手をしてくれました。最後にホームランを打って終わった。気持ち的にはある程度、スッキリしたんじゃないでしょうか」。くしくも、西宮球場も91年の12月にラッキーゾーンが取り払われていた。最高の“リハーサル”を呼び水に本番で大爆発。最後の夏の5打席連続敬遠、そして巨人入りへと連なる「ゴジラ伝説」の序章となった。
《反発係数の低いバット導入に賛同》
松井氏は、今春の96回大会から始まる反発係数の低いバットの導入にも言及。ラッキーゾーン撤去の経緯と異なり、投手の安全面を考慮したもので、「いい試みだと思う」と賛同する意見を述べた。時代を経ての選手のレベルアップが理由で「投手も球が速くなって、いろんなボール(球種)も投げるようになっている。体も(筋力強化の)トレーニングをしてみんな大きくなった。その速い球をその力で打ち返したら、それは凄い打球が出てくる」と語った。
これまでよりも飛距離が抑えられ、本塁打も減ることが予想される中で、ひと味違う戦い方を期待する。
「1点の重み、という野球を、甲子園で見られる機会が多くなるんじゃないかなという気がします。監督さんの采配で、そういう面白さが出てくるんじゃないでしょうか。派手に打つチームが必ずしも上にいけるかというと、そういうわけではない、という」
92年大会を制した帝京(東京)は、大会を通じてノーアーチ。今春も、各校の戦術が見どころになりそうだ。
《“後楽園に合わせる”で誕生》甲子園球場のラッキーゾーンは1947年5月に登場した。当時は両翼が約110メートル、左中間と右中間が約128メートルと広く、本塁打が出づらかったため、当時の巨人の本拠だった後楽園球場の広さに合わせて仮柵を設置。両翼91メートル、左中間と右中間は108.5メートルとなり、ゾーン内にはブルペンが設けられた。その後、ラッキーゾーンを維持したままフェンスの前進や後退の微調整が行われたが、91年12月に撤去。当時の本紙報道によると、両翼は5メートル広がって96メートルになり、左中間と右中間は最深部で8メートル広がった。
《春夏の甲子園大会を米国でも視聴》現在、松井氏の生活拠点は米国。それでも、春夏の甲子園大会はネット中継などで視聴しているという。「大体、母校の試合は見ています。よっぽど夜中、甲子園で午後だとこっちは真夜中なので見られないですが、午前中の試合は見ています」。昨秋の北信越大会を制した星稜は、今春の選抜出場も決定。「監督、コーチもみんな、知っている人ばかりですから。部長も含めて。今は山下さんの息子さん(山下智将監督)が指揮を執っていますし、応援しています」と話した。
◇松井 秀喜(まつい・ひでき)1974年(昭49)6月12日生まれ、石川県出身の49歳。星稜から92年ドラフト1位で巨人入団。02年オフにヤンキースへFA移籍。09年に日本選手初のワールドシリーズMVPに輝く。10年以降はエンゼルス、アスレチックス、レイズでプレーし、12年限りで現役引退。日米通算2643安打、507本塁打。13年5月に国民栄誉賞を授与され、18年に野球殿堂入り。現在はヤ軍のGM特別アドバイザー。1メートル88、95キロ(現役時)。右投げ左打ち。
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