幕開けWBCイヤー!山本&東尾 これが侍オーダーだ

[ 2013年1月1日 06:00 ]

本紙の侍ジャパン予想スタメンを前に、笑顔で3連覇を誓うWBC日本代表の山本監督(左)と東尾投手総合コーチ

 3月開催のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で大会3連覇を目指す侍ジャパンの山本浩二監督(66)と東尾修投手総合コーチ(62=スポニチ本紙評論家)が新春対談を行った。山本監督は侍オーダーを初披露。東尾コーチは固定観念にとらわれないスクランブル投手起用を語るなど、勝負への思いの丈をぶつけ合った。

 山本 明けましておめでとう。いよいよ勝負の年が始まったな。すでに頭の中では野球のことばかり考えてるけどな。

 東尾 昨年ゴルフを何回かやっても、心から楽しんでなかったように見えてましたもんね。

 山本 スコアのことは言うなよ。昔から、2人で負けず嫌いで張り合ってきたけど、力を合わせる時が来たな。本番まで2カ月か。日の丸を背負うプレッシャーとやりがいを監督に就任した10月からずっと感じているよ。

 東尾 浩二さんは北京五輪の時に(守備走塁)コーチで国際舞台を経験しているけど、自分にはない。本当に切羽詰まった時の投手交代の重み、重圧はかかってくるだろうという想像はある。

 山本 考えていることは、いかに選手に普段のプレーをしてもらうかだね。“みんなでやろうぜ”という一体感を宮崎合宿初日の2月15日から出していきたい。

 東尾 投手は緊張とかプレッシャーは避けて通れない。その中でどうやってバッテリー間を楽にさせてあげるか。自分のボールさえ投げられれば大丈夫だという自信を持たせたい。データを詰め込みすぎたり、ボールの滑りばかり気にすると、頭がパニックになる。

 山本 メジャーの選手が辞退したことで、純国産のチームを組むことになった。反対に選手たちも一つになることができる。一体感がプラスアルファのチーム力を生むと信じている。

 東尾 11月のキューバ戦は投手には、ストライク先行で、打たれても本番の参考になるという意識を持てと言った。それで2試合連続無四球。マウンドでは、頭を整理して攻めることだけを考えればいい。シーズン中に外国人選手を相手にしたらボール球で誘うのは鉄則だけど、今度は球数制限もあるし、そうはいかない。これだけボールが滑るので、少々の制球ミスは仕方がない。気持ちで押せるか。

 山本 それはトンビ(東尾コーチの愛称)の得意とするところだな。真ん中に投げても、打つなら打ってみろと。

 東尾 勢いとか気迫が前面に出た方がいい。代表候補の投手は16人いるけど、本大会にはそういう投手を選びたい。ちゅうちょすれば、プレッシャーにつぶされる。

 山本 野手も積極的なプレーがセーフになればベンチも盛り上がる。次の塁を奪う積極的な姿勢もそう。ベンチも含めて一体感を出したい。誰もイチローの代わりを務める必要はないし、求めてもいない。選手それぞれが自分の特長を発揮すること。全員で新たな形をつくっていけばいい。

 山本 打線でいえば、個人の力に頼ることはない。上位も下位もなく、切れ目なく全員でつないでいく。1点を全員で奪う意識。現時点でも打順の構想はあるよ。1番は長野、2番は鳥谷で、松井稼も頭にはある。3番は坂本、4番は慎之助(阿部)、5番は内川。6番は嘉男(糸井)で7番に松田。稲葉を8番の下位に置ければ、安定する。9番にDH。ここは中田も候補になる。

 東尾 ジグザグにすれば、相手も投手交代に迷うことになる。

 山本 その通り。国際大会では、下位打線からチャンスをつくって上位が得点する形も多くなる。1番は4番にもなるし、3番が1番打者になることもある。

 東尾 何でもやってくるというのは、投手からすればいやらしい。

 山本 4番の阿部だってバントはある。無死一、二塁で1点が欲しい時はサインを出す。彼だって、自分からそうするはず。バント練習は必ず宮崎合宿でもやる。5番には経験豊富な内川がいるわけだから。

 山本 個々の選手の力量を信頼して任せることも、チームの一つの形。でも、今回はメジャーの選手もいない。それは逆にチームで動きやすくなる。個々の力だけでなく全員で対抗すればいい。

 東尾 それは投手も同じこと。前回は松坂、ダルビッシュ、岩隈と3本柱がいた。だが、今回は戦い方が違う。役割という上で先発と中継ぎの区別はない。先発が絶対にないと断言できるのは浅尾だけ。

 山本 WBC使用球を触ったけど、これほどまでとは思わなかった。滑るし、縫い目も一定していない。対応に苦しむ投手は出てくる。

 東尾 誰がボールの扱いに苦しむかは予想もできない。3月という時期に誰が調子を上げるかも判断は難しい。そうなれば、大会でも弾力性を持って起用を考えないと。点差が開けば、9人継投で調整登板させることもある。田中と前田健を同じ試合で投げさせることもね。前日に急きょ投げる順番を変えることも出るかもしれない。全員スクランブルになることは宮崎で投手陣に言う。

 山本 球数制限のある中で第1先発、第2先発で1試合2人の先発投手を立てたいという構想はある。でも、それで固定するかといえばそうではない。いろんな可能性を模索しないといけない。

 東尾 例えば150キロを超える投手でも、2月は140キロ前後かもしれない。でも3月に入って上がる場合もある。1次ラウンドで先発した投手でも、2次ラウンドでは違う投手起用になる可能性もある。

 山本 先ほど打順構想を披露したけど、それだって決定ではない。国内組で戦うことで、チームとしていろんなバリエーションが組める。レギュラーを固めつつも、変化に対応していきたい。

 山本 それにしても時間がたつのは早いな。監督候補として名前が挙がったのは9月。一番最初に声を掛けたのがトンビだった。覚えてるか?

 東尾 もちろん。

 山本 現役時代から張り合ってきた。当時は交流戦もないし、新聞でお互いの成績を見てモチベーションにしていた。オープン戦での対戦では、自分のバロメーターにもなった。同じ68年ドラフトの同期入団だけど、おまえ、どっちが先輩か分かっとるか?

 東尾 分かってますよ。ここにきて、絡むのはやめてください。浩二さんが引退の時の日本シリーズ(86年)でも、僕だけ一人、敵チームながら胴上げに行ったじゃないですか。

 山本 そうだった。現役時代からのあうんの呼吸がある。トンビだけでなく、スタッフ全員が前向きで、最高の雰囲気をつくり上げることができると確信している。

 東尾 あとは、選手たちに将来に向けた財産を見つけてほしい。

 山本 そう。大会3連覇がかかるし、日本球界の発展には代表は強くなきゃいかん。でも、選手にとって、この大会が終わりではない。若い選手が多いけど、何かをつかんでもらいたい。野球人生は続くわけだから。

 東尾 投手でいえば、日本代表はこれまで松坂、ダルビッシュがエースだった。その2人ともいない。それは逆にチャンス。田中や前田健、沢村といった若手が日本を代表する投手になればいい。若手は何の遠慮もなく思い切っていける。

 山本 本当、次世代やな。メジャー選手は今回いないけど、若手が成長して、新たなメジャー選手が出ればいい。松坂もダルビッシュもそうだったわけだから。必ず次世代の選手は出る。だから不安はないよ。

 東尾 34人から28人にしなきゃいけない。選考が大変になる。

 山本 北京の時は予選のメンバーを中心に本番も編成した。本番はシーズン途中で故障を抱えている選手もいたが、予選メンバーを大事にした。それは反省材料ではある。でも今回は、選手はシーズン途中ではないし自分の調子を上げることに集中できる。それだけ選考も大変で難しい作業になる。

 東尾 お酒をたくさん飲めるのも、今だけかもしれないですね。

 山本 監督になってから普通に街を歩いていても、“頑張ってください”と声を掛けてくれるファンが多い。期待には応えたいね。

 東尾 まずは浩二さんの言う“アメリカに行こう”を実現する。

 山本 その先に3連覇がある。みんなでつかみにいこう。

 【山本監督が掲げた侍オーダー】

 (1)中堅 長野 久義 (巨)28歳
右右[率].301[本]14[点]60[盗]20

 (2)二塁 鳥谷  敬 (神)31歳
右左[率].262[本]8[点]59[盗]15

 (3)遊撃 坂本 勇人 (巨)24歳
右右[率].311[本]14[点]69[盗]16

 (4)捕手 阿部慎之助 (巨)33歳
右左[率].340[本]27[点]104[盗]0

 (5)左翼 内川 聖一 (ソ)30歳
右右[率].300[本]7[点]53[盗]6

 (6)右翼 糸井 嘉男 (日)31歳
右左[率].304[本]9[点]48[盗]22

 (7)三塁 松田 宣浩 (ソ)29歳
右右[率].300[本]9[点]56[盗]16

 (8)一塁 稲葉 篤紀 (日)40歳
左左[率].290[本]10[点]61[盗]0

 (9)DH 中田  翔 (日)23歳
右右[率].239[本]24[点]77[盗]5

 ◆山本 浩二(やまもと・こうじ)1946年(昭21)10月25日、広島県生まれの66歳。廿日市―法大を経て、68年ドラフト1位で広島入団。MVPを2度、本塁打王を4度獲得するなど、強打の外野手として活躍。通算536本塁打は歴代4位。広島の監督を計10年務め、91年にリーグ優勝。08年北京五輪で日本代表守備走塁コーチ。同年、野球殿堂入りした。

 ◆東尾 修(ひがしお・おさむ)1950年(昭25)5月18日、和歌山県生まれの62歳。箕島から68年ドラフト1位で西鉄(現西武)に入団。最多勝2度、最優秀防御率1度。シュートを武器にし、通算165与死球は日本記録。通算251勝は歴代10位。95~01年に西武の監督を務め、97、98年にリーグ優勝。7年間全てAクラスだった。10年に野球殿堂入り。

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