サニブラウン 日本人2人目9秒台出た!東京五輪“三刀流”侍だ

[ 2019年5月13日 05:30 ]

陸上 米大学南東地区選手権 ( 2019年5月11日    米アーカンソー州フェイエットビル )

男子100メートル決勝で9秒99をマークして優勝したサニブラウン
Photo By 共同

 陸上男子のサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が11日、男子100メートル決勝で追い風1・8メートルの好条件の中、自己ベストの10秒05を0秒06更新する9秒99をマークして優勝した。桐生祥秀(23=日本生命)が17年9月に出した日本記録の9秒98には及ばなかったが、日本人2人目の9秒台で20年東京五輪の参加標準記録(10秒05)を突破。本職の200メートルに加え、100メートルと400メートルリレーの3種目で東京五輪に出場する可能性が浮上した。

 巨体を揺らしながら、大きなストライドで一歩、また一歩と加速していった。中盤からの圧倒的なスピードで、どうだと言わんばかりにトップでフィニッシュ。東京五輪の参加標準記録を突破した日本勢第1号となった。「いつも通りの走りをして、フィニッシュした感じ。(9秒)99なんで誤差かな」とさらり。日本記録についても「そのうち切れるんじゃないですか」と言ってのけた。

 飛躍のきっかけは課題とするスタートの改善だった。17年世界選手権100メートル準決勝ではスタートを失敗するなど拙さがあったが、これまで低く保とうとしていた上体を自然に起こして加速。「スムーズに出られた」と手応えを口にする。

 今年3月の室内では60メートル日本タイ記録となる6秒54をマーク。スタートの出遅れがなくなった分、後半の爆発力がタイムにつながった。かつてスタートが得意な女子短距離のバートレッタ(米国)を練習パートナーにするなど、苦手部分の克服が結実した。

 一年中暖かいからという理由で進学したフロリダ大の愛称は「ゲーターズ」でワニのロゴが特徴的。1メートル88の長身を力強く前に進める姿はまさにフロリダ名物の“アリゲーター”だ。ただ、トラックで暴れ回るだけではなく、勉学にも力を入れる。全米大学体育協会(NCAA)らしく陸上部でも学習に関して規定があり、トラックでの練習は授業を終えた午後2時から約1時間半と制限を受ける中で質の高い練習に取り組んできた。

 17年世界選手権男子200メートルでは上位8人による決勝に進出。同種目で18歳157日での決勝進出はウサイン・ボルト(ジャマイカ)を抜く史上最年少となり世界を驚かせた。その時と比べ体重は4キロ増加。「こっちに来て技術的なことを叩き込まれて、いい走りが癖になる練習をしてきた。それが生かせたレースだと思う」と振り返る。

 仮に本職の200メートルに加え、100メートルと400メートルの3種目で五輪に出場すれば、00年シドニー五輪の伊東浩司以来となる。「地上最速を目指す」と豪語して日本を飛び出した男は、日本短距離界のエースになる可能性を秘めている。

 ▽東京五輪への道 男子100メートルを含む陸上の東京五輪代表選考要項はまだ発表されていないが、16年リオデジャネイロ五輪の要項を参考にすると前年の世界選手権で8位以内に入賞。または派遣設定記録を突破して20年日本選手権で8位以内の最上位。参加標準記録を満たした日本選手権優勝者が内定する。3人までが五輪に出場できる。 

 《最大枠は「3」》サニブラウンは混戦模様の100メートルで東京五輪出場に大前進した。日本記録保持者の桐生は4月のアジア選手権で日本人初V。10秒00の記録を持つ山県は18年、日本人に無敗。この3人がトップグループを形成し、ケンブリッジ、多田らが追う形だ。国際陸連は、五輪資格の新制度を東京で導入。今年5月から来年6月29日までに参加標準記録を突破した選手に優先的に資格が与えられ、次に世界ランキング順で割り振られる。1種目につき1カ国の最大枠は3人。日本陸連が定める代表選出方法は決まっていないものの、先述の条件を満たした上で、来年の日本選手権で一定の成績を収めれば決定となる見通しだ。

 【サニブラウン・ハキーム】
 ☆生まれとサイズ 1999年(平11)3月6日生まれ、東京都出身。父はガーナ人で母は日本人。1メートル88、83キロ。
 ☆競技開始 陸上は小4から。それまではサッカー少年。東京・城西大城西高に進み、17年9月からフロリダ大へ進学。
 ☆ボルト超え 15年7月の世界ユース選手権(コロンビア)で100メートル10秒28、200メートル20秒34で制し、2冠。200メートルはウサイン・ボルト(ジャマイカ)が持っていた大会記録を破った。
 ☆最年少記録 15年世界選手権は200メートルに出場。16歳172日で予選を突破し大会最年少記録を更新。17年世界選手権はボルトが持っていた200メートルの最年少決勝進出(18歳355日)を塗り替えた。
 ☆文武両道 勉強面のサポートが充実したフロリダ大を選び、スポーツマネジメントを学ぶ。「ずっと陸上をやるわけじゃない。資格を持っておいた方がいい」

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