NBAサンズを追われたブレッドソーの軽率なつぶやき なぜそんなことを…

[ 2017年10月29日 09:30 ]

チームから追放されたサンズのブレッドソー(左=AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】NBAサンズの主戦ガード、エリック・ブレッドソー(27)は今季3試合を終えた時点でライアン・マクダノーGM(36)に「もう来なくていい。自宅に帰ってくれ」と“出入り禁止”を宣告された。昨季21・1得点を挙げている実力派のベテラン。しかし開幕3連敗の後、「ここにはいたくない(I Dont wanna be here(原文のまま)」とツイートしてGMの怒りを買った。

 「彼女と一緒にヘアサロンにいたんです。“here”とはヘアサロンのことですよ」という本人の主張(言い訳?)は「そんなわけはないだろう」とあっさり却下。マクダノーGMは時同じくして、2季目を迎えていたアール・ワトソン監督(38)を解雇したが、その一方で不満分子の追放にも踏み切った。

 トランプ大統領はツイートを多用する指導者。ただNFL選手への批判はかえって反感を買い、国歌吹奏時に膝をつく行為は黒人差別への抗議という当初の目的から、大統領に対する反感を示す意思表示に姿を変えた。

 ソーシャルネットワーク(SNS)での安易な発言が論議と誤解を招くのは今に始まったことではないが、どうもコミュニケーション・ツールとしては不完全のように思える。文句があるなら、そしてケンカをした相手と仲直りしたいなら、当時者に面と向かっていた時代はさほど昔の事ではない。愛の告白は本人の前なのに(そう信じたい)、ネガティブな発言だけは違うアングルから世間に広まるようになってしまった。

 年俸1450万ドル(約16億5000万円)のブレッドソーは何を思ってツイートしたのだろう?そんなことを言えば処分されるのは当たり前だし誰も同情しない。クリッパーズ時代のチームメートでもあるディアンドレ・ジョーダン(29)にも「友よ、家に帰れ」と言われたほど。普段の生活であまりにも気軽に利用していたその感覚が、ブレッドソーの理性をマヒさせたように思う。

 リーグの看板スター、キャバリアーズのレブロン・ジェームズ(32)のフォロワーは3915万人を数えている。東京都の人口の約3倍。何かを言えば影響力は大きい。トランプ大統領に対して「Bum(愚か者)」という言葉を使ったツイートはたちまち世界中に広まり、各メディアにニュースとして取り上げられた。しかし、彼はチーム内に対して批判はしない。ある意味、使いどころを熟知しているし、間違った方向には行かない。

 サンズはブレッドソーを排除し、ジェイ・トリアーノ・アシスタントコーチ(59)が監督代行となった23日のキングス戦で初勝利。とりあえず危機的な状況は脱出した。チームの結束力も高まったように見える。

 SNSは便利だ。それに異論はない。ただし使い方次第で、それまでつながっていた人と人が離れていくこともある。もしかしたら言いたい相手に直接語りかけたほうが得策では?クリックする前にちょっとだけ考えてみよう。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市小倉北区出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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