帝京大 前人未到の7連覇達成!「魔法のパズル」で心整った

[ 2016年1月11日 05:30 ]

<帝京大・東海大>7連覇に歓喜する坂手主将(中央)ら帝京大フィフティーン

ラグビー全国大学選手権最終ステージ決勝 帝京大27―17東海大

(1月10日 秩父宮ラグビー場)
 日本ラグビー界に新たな金字塔を打ち立てた。ラグビー全国大学選手権決勝が10日、秩父宮ラグビー場で行われ、帝京大は27―17で東海大を破り、7連覇を達成した。フッカー坂手淳史主将(4年)がケガの影響でリザーブスタート、主力のFB森谷圭介(4年)は直前の故障で欠場する中、前半は5―5と苦しい立ち上がりとなったが、後半に持ち前のアタック力を発揮。岩出雅之監督(58)は選手らの手により7度、宙に舞った。帝京大は今月31日の日本選手権(秩父宮)で、トップリーグ王者と対戦する。

 長い笛とともに、深紅のジャージーの選手たちがこぶしを天に突き上げた。前人未到の7連覇。新日鉄釜石と神戸製鋼が日本選手権で達成した特別な数字に、学生ラグビー界で達成する偉業を成し遂げた。総勢142人の部員の手によって宙に舞った岩出監督は「ホッとしています。厳しいゲームだったので、これまでの6回と違った充実感を感じる」と声を上げた。

 序盤から一進一退の攻防が続き、前半31分にモールからのトライで均衡を破られた。スクラムも劣勢。同34分に1トライを返したが、同点での折り返しは想定外だった。それでも指揮官が「厳しさを楽しもう」と指示を出すと、後半はバテ始めた相手FWを尻目にテンポの速い攻撃を仕掛け、後半1分にPGで勝ち越すと、同6分には自陣からボールをつなぎ途中出場のFB重がトライ。岩出監督は「前半のクロスゲームが選手の集中力を高めた」と振り返った。

 順風満帆だった今季は終盤に逆風にさらされた。対抗戦では最終の筑波大戦で敗戦。「あれで練習での一つ一つの精度が上がった」と振り返った坂手主将自身が、先月27日の中大戦で左肘を脱臼し準決勝を欠場すると、7日にはバックスの柱であるFB森谷が左膝前十字じん帯断裂。不測の事態に選手たちは動揺したが、土俵際で持ち直す力強さが備わっていた。

 一つは1年間、厳しい練習で培った自信。そしてスポーツ心理学の教授として教壇に立つ岩出監督の“仕掛け”も奏功した。2日の準決勝前から全選手、スタッフに一つずつ、パズルのピースを渡した。試合に向け心身両面の準備を整えた人間からはめ込み、完成すると「雲外蒼天(そうてん)」の書と深紅の富士山が浮かび上がる。昨年のW杯で日本代表のエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチが発案した「魔法のパズル」を岩出監督も導入。書の意味の通り、困難を乗り越えた先にV7という青空が広がっていた。

 7連覇の達成感については「学生スポーツの中でやっている。連覇も大事だが、学生が社会でも生きるような力を身に付けられるようにしたい」と話した岩出監督。7の数字よりも、142人の笑顔が何よりの財産となった。

 ▽雲外蒼天(うんがいそうてん)暗雲の向こう側には青空が広がっていることから、困難を乗り越えれば良いことが待っているという意味。

続きを表示

2016年1月11日のニュース