稀勢の里 大関一人負け…取り直しで“救われた”のに黒星発進

[ 2016年1月11日 05:30 ]

稀勢の里(右)と安美錦との取り直しになった一番

大相撲初場所初日

(1月10日 両国国技館)
 日本出身力士として10年ぶりの優勝を期待される大関・稀勢の里(29=田子ノ浦部屋)は安美錦(37=伊勢ケ浜部屋)に押し倒され、痛い黒星スタートとなった。1年ぶりの天覧相撲だったが、取り直しの末にベテランの立ち合いの変化からの攻めに屈して敗北。他の3大関3横綱が白星を挙げる中で、最も期待を受ける日本人大関が初日早々つまずいた。

 期待が懸かれば懸かるほど、稀勢の里には重荷になるのだろうか。相撲巧者の安美錦に取り直しの末に敗れて館内は深いため息が充満。支度部屋に戻っても悔しさと情けなさが消えず、何を聞かれてもうつむいて「うーん」としか声を発することができなかった。

 10年ぶりの和製Vへの待望、そして1年ぶりの天覧相撲。いつもの場所と比べて今回の初日の持つべき意味は大きかった。その中で迎えた最初の相撲。愚直に前に出たが、土俵際での相手の引きに左肘がついて軍配は安美錦に上がった。それでも審判団から“救い”の物言いがつき同体の判断で九死に一生を得た。館内からは後押しとなる「もう一丁」コールも巻き起こっていた。

 しかも、土俵下に落ちた安美錦と井筒審判長(元関脇・逆鉾)がぶつかり、ビデオ室とつなぐ通信機器が故障。その影響で協議終了までに約4分もかかり、考える時間が生じた。だが、冷静だった のは相手の方。取り直しは立ち合いで変化されて体勢を崩し、こらえたところを押されて土俵下に転げ落ちた。館内の後押し、審判の判断、与えられた待ち時間。その全てを生かせず敗れた。

 「準備はできた」と調整は順調だった。4~6日の一門連合稽古では4歳年上の嘉風、2歳年上の琴奨菊と白熱の稽古。「先に息が上がっては恥ずかしい」と先輩に負けじと3日間で計62番(48勝14敗)をこなした。「うまい酒が飲めればね」と正月気分は場所後に取っておくつもりだった。

 大事な初日でつまずいたが、まだ15分の1。八角理事長(元横綱・北勝海)も「まだ初日。肩の力が抜けた方が逆にいい相撲を取ると思う」と変わらぬ期待を懸けた。優勝に準ずる成績は過去に8度。実績は日本人No・1であることは違いない。もう一度奮起し、挽回するチャンスは残されている。

続きを表示

2016年1月11日のニュース