吉田 五輪生き残りへ孤軍奮闘!“運命の一日”前に活動

[ 2013年5月29日 06:00 ]

「スポーツアコード」の会場で、国際レスリング連盟のラロビッチ会長(右)と写真に納まる吉田。左は日本レスリング協会の福田会長

 五輪生き残りへ、孤軍奮闘だ。20年夏季五輪の実施種目を審議する国際オリンピック委員会(IOC)理事会は29日に行われる。2月の同理事会で実施競技から外れたレスリングは、女子55キロ級で五輪3連覇の吉田沙保里(30=ALSOK)が28日に会場でロビー活動を敢行。来場予定だった霊長類最強のアレクサンドル・カレリン氏(45)は膝のケガで入院中で夢のタッグは実現しなかったが、“運命の一日”を前に精力的に動いた。

 首にかけた3つの五輪金メダルに劣らず、その存在感は輝いていた。29日のIOC理事会を前に吉田が国際会議「スポーツアコード」の会場に姿を見せた。「メダルを持ってきた方がいいかなと思って。いろんな方に声を掛けて、(五輪に)残ると信じて頑張る」。テレビカメラを引き連れて歩く国民栄誉賞レスラーは会場でも注目の的。日本協会の福田会長によると、IOC理事とも接触し、練習してきた英語で五輪残留を訴えたという。

 吉田とともに会場でロビー活動に励む予定だったカレリン氏は、ロシア関係者によると膝のケガのため入院中で、来場できなくなった。吉田はこの日、世界大会12連覇の最強レスラーの不在を聞かされた。「“え~っ”と思った。お会いできると思っていたから残念」と言いながらも「彼の分まで頑張ります」と闘志をかき立てた。

 2月のIOC理事会で、レスリングが20年夏季五輪の実施競技から外れた。野球・ソフトボール、空手など他の7競技と争う残り1枠。29日の理事会では9月のIOC総会に諮る競技が審議され、3競技程度に絞り込む見通し。日本時間30日午前1時30分ごろに開かれる会見で発表される予定だ。IOC委員からはレスリング除外を批判する声も出ており、レスリングは最終候補入りが有力。国際レスリング連盟は18日の臨時総会でルール改正や女性副会長の起用などの改革案を決め、ラロビッチ会長も「自信はある」と手応えを見せた。

 理事会前には各競技のプレゼンテーションが行われる。吉田ら金メダリストを擁する日本女子にも国際連盟から出席の要請があったが、語学力などの問題があって断念した。プレゼンでのIOC理事への直接的な訴えは、ラロビッチ会長や08年北京五輪女子48キロ級金メダルのヒュン(カナダ)ら5人に任せ、吉田はロビー活動に徹する。

 除外が決まって以降、吉田が一貫して訴え続けてきた思いがある。「後輩、子供たちの夢をかなえるために、レスリングを残してほしい」――。自分のためだけじゃない。次世代に夢舞台をつなげるために。「戦いに来た」という国民栄誉賞レスラーは、全力を尽くして審判の時を待つ。

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