亡き師に金を…海老沼&上川 明大柔道部前監督に約束

[ 2012年7月12日 06:00 ]

藤原敬生・前明大監督の遺影に五輪出場の報告をする上川(奥)と海老沼

 魂は紫紺の恩師とともに――。ロンドン五輪に出場する柔道男子66キロ級の海老沼匡(22=パーク24)と同100キロ超級の上川大樹(22=京葉ガス)の明大出身コンビが11日、昨年8月29日に亡くなった藤原敬生・前明大監督(享年52)の遺影に五輪出場を報告。本番で金メダルを獲得することと笑顔の帰国報告を約束した。

 一周忌まで納骨をしていないため、何度か招かれたことがある藤原家を訪れた2人は、そっと遺影に手を合わせた。海老沼は「ロンドンは一緒に行くはずだったんですけど…。頑張ってきますというより、一緒に行って、一緒に戦ってください、と伝えました」と表情を引き締めた。上川は「自分の柔道をしてきます、と。シンプルに言ってきました」と話し、自身の壮行会でプレゼントされた、藤原前監督とロンドンの街が合成されたパネルを供えた。

 ともに今春、明大を卒業。ロンドン五輪代表の座を手にした。2人にとって、がんと闘いながら部を率いていた恩師は、ずっと心の支えだったという。昨年7月に兵庫県内で行われていた明大の合宿に、車椅子で姿を見せた。それが最後の姿。悲報は、そろって出場した昨年8月の世界選手権、帰国便を待っていた29日にパリで聞いた。表彰台にも届かなかった上川は「僕があんな試合をしてしまったからかなあ、と思ってしまった」と力ない笑顔で当時を振り返った。

 ロンドンへ2人を送り出すのは、入学時から前監督が口にしていた約束。その約束は果たしたが、もちろんそれだけでは足りないことは分かっている。「きっと“楽に。自然体でいけ”と言ってくれると思う。五輪で金を獲って、一緒に戦ってくれてありがとうございましたと報告したい」と海老沼。藤原メイジ最後の主将を務めた上川は「だらしない主将で一番面倒を見てもらったと思う。金メダルを持って帰って、笑顔で報告したい」と話し、恩返しを誓った。

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2012年7月12日のニュース