稀勢の里ぶっつけ初日 3日連続稽古なしでも通夜参列

[ 2011年11月11日 06:00 ]

斎場を出る稀勢の里

 7日に急性呼吸不全で急死した元横綱・隆の里の鳴戸親方(本名・高谷俊英、享年59)の通夜が10日、千葉県松戸市内の斎場で営まれた。九州場所(13日初日、福岡国際センター)で大関獲りに挑む弟子の関脇・稀勢の里(25)は勝負の場所が直前に迫りながら朝稽古を休み、宿舎のある福岡市から駆けつけて参列。初日まで3日連続で稽古ができない異例の調整となるが、揺るぎない決意のもと亡き師匠の霊前で大関昇進を誓った。

 九州場所初日は3日後に迫っているが、稀勢の里はこの日の午前中に福岡市東区の九州場所宿舎を出発。師匠との数え切れないほどの思い出が詰まった千葉県松戸市の鳴戸部屋に戻り、午後6時から始まった通夜に参列した。

 名古屋と秋場所で22勝を挙げ、九州場所で11勝以上を挙げれば大関に昇進する可能性が高くなっている。大関獲りについて、故鳴戸親方は親しい知人に生前「地力も付いてきた。やってくれるだろう」と漏らし、稀勢の里自らも「(大関獲りのために)場所前からしっかり調整してきましたから」と意欲十分だった。しかし、そこに突如として訪れた師匠の死。大関候補には今まで以上の試練が待っていた。告別式が行われるきょう11日にも福岡に戻るが、初日前日の12日も三役力士として土俵祭りに参加するため、3日連続で稽古できない状況だ。

 場所直前に福岡と千葉を往復することになり、稽古不足や移動の疲れが心配されるが、関係者の見方は違う。通夜に献花した横綱・白鵬は「稀勢の里は稽古の貯金がある。初日、2日目を乗り越えていけば問題ない」と角界一の稽古量を誇る鳴戸部屋の所属力士だからこそ“自信を持て”とエール。NHK解説者で元小結の舞の海秀平氏は「最近は下位への取りこぼしが少なくなり精神面での成長を感じます」と大関に昇進できる力が付いていることを強調。「固い絆で結ばれた師匠から授かった教えを胸に、強い気持ちで土俵に上がってほしい」と弔いの精神が活力となると見ている。通夜参列者によると、斎場で稀勢の里は神妙な顔つきを浮かべていたという。苦難を乗り越えた先にある栄光をつかむべく、25歳の若武者は亡き師匠に最後のあいさつを行うことを選択した。
 

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2011年11月11日のニュース