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失意のロシェットに勇気与えた“元ルームメート”

[ 2010年2月24日 06:00 ]

アイスダンスで優勝したカナダのバーチュー、モイヤー組

 【アイスダンス】2人分の荷物が1人分になっていた。アイスダンスで北米勢初の金メダルを獲得したカナダのテッサ・バーチュー(20)はこの日、ルームメートがいなくなった選手村の部屋をそっと出た。

 沈黙が生む不安感。胸は張り裂けそうだった。話し相手になってくれていた女子フィギュア代表のジョアニー・ロシェット(24)は個室に移った。母テレーズさんが21日に心臓発作で急死。失意のどん底に落とされ、カナダ側はその心情を察して彼女を“1人の世界”に導いた。
 だが、不安は興奮へと変わった。「完ぺきな演技。13年も一緒にやってきて本当に良かった」と同郷で7歳からコンビを組むスコット・モイヤー(22)との息はぴったり。難度の高いリフトやスピンを次々に決めた。08年、バーチューは両足のすねを痛めて手術したが「痛みのない状態で演技できたのは幸せ」とモイヤーと抱き合って喜びを分かち合った。
 スタンドは総立ち。06年ジュニア世界選手権を制しているとはいえ、五輪初出場の若い2人にそれほど期待はかかっていなかった。ところが予想を覆し、欧州以外で初めてのアイスダンス制覇。カナダにとっては60年スコーバレー大会のペア(ワグナー、ポール組)以来、50年ぶりとなるフィギュアでの金メダルで、カナダ全土が沸いた1日となった。
 “かん口令”が出されていることもあって、バーチューはロシェットについては語らなかった。だが、その雄姿をロシェットは目に焼き付けたことだろう。23日に行われる女子SP。「美徳(VIRTUE)」という名のルームメートが残したエネルギーは、もう一つのドラマを生むかもしれない。

 ◆テッサ・バーチュー 1989年5月17日、オンタリオ州ロンドン出身の20歳。08年の4大陸選手権で優勝、同年の世界選手権では2位。カナダ選手権では08年から3連覇を達成しているが、シニア大会の本格参戦は今季が初めて。1メートル62。
 ◆スコット・モイヤー 1987年9月2日生まれの22歳。現在はバーチューとともに米国ミシガン州キャントン在住。1メートル73。2人の兄もフィギュアの選手。

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2010年2月24日のニュース