「ブギウギ」絶妙な明暗対比 趣里と水上恒司のなせるわざ

[ 2024年2月2日 08:18 ]

連続テレビ小説「ブキウギ」でスズ子(趣里)が赤ちゃんを抱く場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で、主人公の歌手・福来スズ子(趣里)の出産と恋人・愛助(水上恒司)の死が描かれた。

 2月1日放送の第85回でスズ子の陣痛と愛助の危篤、2日放送の第86回でスズ子の出産と愛助の死、スズ子の悲しみの涙と赤ちゃんの生命感あふれる泣き声。「明」「暗」の場面の対比が絶妙で、強い印象を残した。

 制作統括の福岡利武氏は「デリケートな編集作業でした。シーンのちょっとした並べ方の違いでスズ子に寄りすぎたり愛助に寄りすぎたりしてしまいます。見ている方々に2人の状況をしっかり感じてもらった上で物語を進めるような編集は難しい。演出の二見大輔くんがその勝負どころを分かっていて時間をかけて編集しました」と振りかえる。

 史実としては、スズ子のモデルとなった笠置シヅ子さんは、愛助のモデルとなった吉本穎右(えいすけ)さんが亡くなって約2週間後に出産し、出産時には既に穎右さんが亡くなったことを知っていた。

 福岡氏は「脚本作りの中で、愛助が亡くなるタイミング、スズ子にそれを伝えるタイミングについては議論しました。生まれて死んで…という流れはドラマチック過ぎて、ドラマの仕掛けがにおってしまい、見ている方々が冷めるのではないかという懸念もありました。しかし、脚本の足立紳さんは『この流れが自然でしっくりくる。出産前に愛助が亡くなったことをスズ子に伝えるのは残酷過ぎる』とおっしゃっていました。私は第86回のラストシーンも含め、3人が一緒に生きていくという感じが伝われば良いと思いました。編集していく中で、引き込まれる展開を作ることができて良かったと思っています」と語る。

 危惧した「ドラマの仕掛けのにおい」を強めることなく、印象深い物語の流れを生み出すことに成功した要因は何か。

 福岡氏は「それはやはり趣里さんと水上さんのお芝居のなせるわざだと思います。お二人にスズ子と愛助の置かれた状況をしっかり演じてもらったからこそ、皆さんに共感してもらえるものになったのではないでしょうか」と話す。

 第85回と第86回のスズ子と愛助のそれぞれのシーンは劇的なものでありながら、趣里と水上の芝居に過剰さは感じられず、2人が物語の中に自然に溶け込んでいるように見えた。

 福岡氏は「趣里さんは事前に準備し過ぎていなかったと思います。スズ子が置かれた状況を感じてそれを素直に表現しているように見えました。水上さんもそれまでの積み重ねがあったので、スズ子に対する愛助の思いを自然に表現できていたと思います。水上さんは『いろいろ思うことはあるけれど素直な表現をしました』とおっしゃっていました」と明かす。

 第86回の最後は、スズ子が自宅で愛助、赤ちゃんと楽しく過ごす夢を見る場面だった。スズ子が柔らかく歌う「ラッパと娘」が流れ、シャボン玉が空に向かう結末に一筋の光明が感じられた。

 福岡氏は「笠置さんは穎右さんとの夢、『ラッパと娘』の夢に関して本に残しています。笠置さんが夢を見たのは出産前だったと思いますが、脚本作りの段階で、スズ子が夢を見るタイミング、その内容について議論しました。このドラマは生活感も大事にしているので、スズ子が日常の中で幸せをかみしめる夢が良いと考えました。あのシーンは赤ちゃんが一緒だったので趣里さんも水上さんも楽しそうに演じていて、愛ある場面になったと思います。あの『ラッパと娘』で自然とスズ子が母親になったことも感じられました」と話す。

 水上のクランクアップは、放送日としてはさかのぼり、スズ子と愛助が最後の楽しい時間を過ごす箱根旅行のシーン(1月26日放送の第81回)だったという。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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