中森明菜 19歳と58歳の「北ウイング」 BS-TBS特番再編集版

[ 2023年12月29日 09:20 ]

「北ウイング-CLASSIC-」をレコーディングする中森明菜(AKINA NAKAMORI OFFICIAL YouTubeより)
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】そこに「2人の中森明菜」がいる。1人は19歳、もう1人は58歳。前者は1984年の「日本レコード大賞」のステージで「北ウイング」を歌い、後者は2023年の映像で「北ウイング-CLASSIC-」を歌っている。

 2人はもちろん同一人物だが、歌い方が大きく異なる。一つの楽曲を違う解釈で歌っているのだ。19歳の歌にはきらめきがあり、58歳の歌にはぬくもりがある。それを可能にしたのは、やはり、唯一無二の歌唱力に違いない。1月2日に放送されるBS─TBSの特番「中森明菜 女神の熱唱~新たな歌声&独占メッセージ~」(後7・00)は歌姫・明菜の魅力を鮮明に表す。

 この番組は本来、2022年11月4日に放送された特番「中森明菜デビュー40周年 女神熱唱!喝采は今も」の再放送のはずだった。特番は「ザ・ベストテン」「日本レコード大賞」などでの歌唱映像を集めたもので、デビュー曲「スローモーション」(1982年)から「TATTOO」(88年)まで、明菜の全盛期と言える80年代の曲に特化しており、番組の最後に「新たな歌声を待っている」とのメッセージを掲げていた。

 ところが、明菜は「林哲司50周年記念トリビュートアルバム サウダージ」(23年11月8日発売)のために「北ウイング」をセルフカバーしていた。つまり、「新たな歌声」を世に出した形だ。

 番組の制作プロデューサー・落合芳行氏は「再放送の話は以前から明菜さんの事務所にお伝えしていたのですが、われわれはトリビュートアルバムのことは知らなかったので、驚きました。その後、事務所から『再放送の機会に番組のどこかで『北ウイング-CLASSIC-』のことを紹介していただけませんか?』と打診を受けました。われわれは明菜さんの『新たな歌声』は番組の大きな要素になると考え、番組を再編集することにしました」と話す。

 再編集した特番には、明菜が自身のYouTubeチャンネルで公開した「北ウイング-CLASSIC-」のミュージックビデオ(MV)、明菜の音声メッセージ、林哲司氏のインタビューが加わっている。MVはテレビ初公開、メッセージは番組独占だ。

 落合氏は「再編集に当たって、明菜さんのメッセージをいただきたいと考え、事務所にお願いしました。正直なところ、手書きの文面くらいになると思っていたのですが、結果として、音声でいただけることになりました。われわれは、明菜さんに話していただきたい内容を考え、セルフカバーの経緯や事前の準備、オリジナル曲との違いなどの質問項目を事務所に送りました。メッセージは30秒か1分くらいになると想像していましたが、明菜さんは質問項目のひとつひとつに答えてくれて、3分半くらいに及んでいました。貴重な話や本音をうかがえ、これをできる限り番組で使おうと思いました」と語る。

 番組の中でメッセージは約40年前と現在を結ぶ架け橋の役割を果たしている。特にセルフカバーの事前準備を語っているくだりが興味深い。自身の声について触れているのだが、その内容は驚くほど赤裸々だ。「北ウイング」と「北ウイング-CLASSIC-」の違いを語っているくだりも面白い。58歳の明菜が19歳時の曲をあのように歌った理由がよく分かる。そして、話す声が歌声と違って明るく甘いところが印象的だ。

 落合氏は「話すとあの声、歌うとあの雰囲気…。『明菜さんが帰ってきた!』と感じて私もうれしかったです。われわれ以上に明菜さんを待っている多くのファンがいますが、今回のような機会をいただいてその思いを共有することができて本当にありがたいです。昨年番組を放送した段階では、明菜さんは一歩を踏み出しながらも二歩目がどうなるか分からない状況だったと思います。でも、今回は明菜さんが十歩も二十歩も先に進んだような気がしますし、二十歩進めたのなら百歩進めるような気もします」と話す。

 BS─TBSは2023年9月5日に姉妹編の特番「中森明菜 女神の熱唱2 ザ・ベストテン不滅の歌声」も放送しているが、今回のような明菜の活動の進展に併せ、第3弾、第4弾の制作も期待される。

 落合氏は「TBSには明菜さんの映像の在庫がまだたくさんあります。われわれの理想としては、映像素材を紹介するだけではなく、明菜さん側とうまく連携して番組を作りたいと考えています。実現したいこと、明菜さんにお願いしたいことはいっぱいあるのですが、無理のないように、相談させていただきながら、できることをやっていきたいと思います」と語る。

 2024年はファンにとってさらに明るい1年になるかもしれない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

続きを表示

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2023年12月29日のニュース