中村七之助 「どうする家康」石田三成役 「まっすぐさゆえの危うさ」

[ 2023年10月29日 20:45 ]

大河ドラマ「どうする家康」で石田三成を演じる中村七之助(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK大河ドラマ「どうする家康」で石田三成を演じる歌舞伎俳優の中村七之助(40)がインタビューに応じ、関ケ原の戦いを迎える思いを明かした。

 ──これまでどのような思いで演じて来ましたか?
 「石田三成は第35回に初登場して第43回で関ケ原を迎えます。この短い時間にどのような心でやっていけばいいのかということを考えました。第35回で三成は家康に『気が合いそうでござるな』と言いました。家康は年齢も相当に上で、尊敬もしているので、頼っている面がありました。ここまで関係の良い家康と三成はこれまでの作品にはなかったのではないでしょうか。それなのに2人は関ケ原で戦うことになる。そこに至った三成の内面を強く出そうと思いました」

 ──三成の内面とは?
 「豊臣秀吉のことを怖いくらいに崇拝しています。それがゆえに太閤殿下の考えが絶対の正義だと思っています。どんなに信頼していた人でも、考え方が違うならば悪になってしまう。太閤殿下が生きていた時はもちろんそうですが、亡くなった後にどんどん思いが強くなっている。凄い存在がいなくなって、自分がなんとかしなくてはいけないと思っている。しかし、空回りし、視野が狭まり、拒絶していってしまう。それで家康ともたもとを分かつことになる。私はそのように演じ、三成のまっすぐさゆえの危うさを出すようにしました」

 ──その内面とご自身の内面がリンクするところはありますか?
 「私も父のことを大尊敬しているので、そこは自分に近いものがあります」

 ──関ケ原のシーンは?
 「知略をめぐらせる石田三成という面より乱世を生きた石田三成という面を出そうと思いました。知恵でのしあがった武将だと思われがちですが、いざ戦うとなればやはりたぎるものがある。関ケ原での実質的な総大将としての心意気、家康に対する思い、嶋左近ら家臣に対する思い、太閤殿下への思いを背負って演じました」

 ──三成を演じる上で事前に何かしましたか?
 「クランクインする前、長浜市を訪れて『三成タクシー』に乗りました。歴女が好きそうな今どきな三成のイラストが車体に描かれたタクシーに乗って三成ゆかりの地を回りました。その時、地元の方々が三成にどのような思いを抱いているのかということを肌で感じました。関ケ原で負けたこともあって世の中には悪役のイメージもありますが、地元の方々は本当に三成のことを愛しています。今の時代でもそのように愛されているのは、三成が熱い思いを持ち民のことを考えていた武将だったからだと思いました」

 ──クランクインの時、三成をどのような存在として演じようと思いましたか?
 「古沢良太さんの脚本を忠実に演じたいと思いました。自分の中にはそれまでの三成像がありましたが、それは完全に忘れて、古沢さんが書いた三成を自分のものとして出すようにしました」

 ──特に印象に残るシーンを教えてください。
 「やはり家康との出会いと別れ、そして最後のシーンはとても印象的でした」

 ──友人の松本潤さんが演じる家康との別れのシーンは?
 「松本潤は父のことを尊敬しています。私も父のことを尊敬しています。だから、例えば彼が万が一、父の役者としての思いや考えに反するようなとんでもないことをやり始めたと想像すれば、家康と別れる三成の気持ちを理解するのは簡単だと思いました。信じていたがゆえに、こいつ何を考えているんだ!という怒りに変わる。私にもそういうところがあります。だから、古沢さんが書いた三成は演じやすかったです。三成の初登場から関ケ原までの話数は少ないですが、三成が急に家康を嫌いになったようには見えないはずです。無理なくできました」

 ──最後に、松本さんへのメッセージをお願いします。
 「同じ役を1年以上続けるのは大河ドラマしかないと思います。私も長い役者人生で、時間をおいて何度も同じ役をやることはありますが、同じ役を続けてやったことはありません。難しく、プレッシャーもあっただろうと思います。これまでもたくさん踏ん張りどころがあったでしょうが、関ケ原が終わっても、大坂冬の陣、夏の陣といろんなことがまだまだあります。体に気をつけて最後まで録りきってほしいと思います」

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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