映画界を彩ったおしどり夫婦の貴重な足跡展

[ 2023年8月24日 20:20 ]

「月丘夢路 井上梅次100年祭」の出品リストが掲載された冊子
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】第105回全国高校野球選手権決勝で、慶応(神奈川)が連覇を目指した仙台育英(宮城)を撃破し、107年ぶり2度目の優勝を飾った。幼稚舎(小学校)から大学までの現役塾生だけでなく、OBたちも快さいを叫んだことだろう。

 こちらは107年ぶりならぬ100年祭だ。東京・京橋の国立映画アーカイブで甲子園決勝戦前日の8月22日に展覧会「月丘夢路 井上梅次 100年祭」が幕を開けた。宝塚歌劇団から映画界入りし、美貌と優れた演技力でスター女優となった月丘さんを1957年に妻に迎えたのが井上梅次(うめつぐ)監督で、彼も慶応義塾大学経済学部の卒業生だ。大学の成績証明書(52年)が展示されている。

 石原裕次郎さん主演の「嵐を呼ぶ男」(1957年)など娯楽性に富んだ作品を多く発表した井上監督は、「火の鳥」(56年)、「月蝕」(56年)、「夫婦百景」(58年)、「素晴しき男性」(58年)など月丘さんの出演作も数多く手掛け、2人は映画界屈指の名カップルと呼ばれた。

 1923年5月31日に京都市で産声をあげ、2010年2月11日に86歳で永眠した井上監督は、戦後デビューの監督では最多となる116本の作品を生涯に残している。66年に招かれた香港で腕をふるった17本も、その中に含まれている。

 妻の月丘さんは1921年10月14日に広島市で誕生。夏休みに訪れた東京で観た宝塚歌劇団に感激して書いた高等女学校時代の日記(36年)も展示されていて、その興奮ぶりが伝わってくる。

 月丘さんといえば、53年公開の映画「ひろしま」(監督関川秀雄)の女学校の教師役も印象深い。原爆投下で被ばくした子供たちの手記が原作となった作品は9万人近い広島市民がエキストラ出演して当時の模様を再現。そのスチール写真も掲出されているが、爆心地に近い場所で生まれた彼女にとっても忘れられない1本だったに違いない。

 山崎豊子さん原作の小説を山本薩夫監督が映画化した「華麗なる一族」(74年)の万俵家の妻も代表作の1つ。劇中で使われたソファとテーブルが展示スペースにどっかと置かれている。他にも2人の往復書簡や結婚式の記念写真と芳名帳など貴重な資料が目白押しの夫婦展。11月26日までの長期開催だ。

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