北原里英 「新たな挑戦」で作家デビュー  過去に評価されていた「文才」

[ 2023年8月2日 07:40 ]

小説「おかえり、めだか荘」のゲラをチェクする北原里英
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 【牧 元一の孤人焦点】俳優の北原里英(32)が8月30日発売の小説「おかえり、めだか荘」(KADOKAWA)で作家デビューする。

 2年前、小説を書けるタレントを出版社側が探していることを所属事務所のマネジャーから聞いたのがきっかけだった。

 北原は「新たな挑戦をしたいと思いました。仕事と結婚、出産をてんびんに掛けるアラサー女性のコラムみたいなものと、絵本みたいな文章の2本を提出しました。これまで役者としていくつもオーディションに落ちてきたので、その時も選ばれない前提で送りましたが、『光るものがある』と連絡をいただきました」と振りかえる。

 実はこんな過去がある。AKB48在籍中の2012年、インターネット交流サイト「Google+」での活動の一環としてグループ内で「部活動」が始まった時、北原は「文芸部」の部長に選出された。

 総合プロデューサーの秋元康氏は当時、北原のことを「文才がある」と評価。北原自身も「小説を書こうと思ったことは何回もあります。シチュエーションは思いつくけれど面白いオチが思いつかないので書く前に挫折しています」と明かしていた。

 その文才を生かし、AKBの派生ユニット「Not yet」の楽曲「guilty love」を作詞したこともあった。

 それから11年。北原は「そう言えば、そんなこともありましたね。その時の伏線を回収しました」と笑う。

 初めての小説を書く作業は、元SKE48で俳優の松井玲奈、元乃木坂46でタレントの高山一実、NEWSの加藤シゲアキらの小説を参考のために読むところから始まった。

 「その時はまだ半信半疑でした。玲奈ちゃんたちの小説を読んでみて、私がこんなものを書けるわけがないと思いました。KADOKAWAさんから『北原さんはルームシェアの経験が豊富なので、それを題材にしたらどうでしょうか』とヒントをもらって、私は当時30歳になる直前で、30歳の女性の選択肢の多さを実感していたので、アラサーの女性たちがルームシェアする話なら書けるかもしれないと思いました」

 小説のあらすじはこんな感じだ。アラサー女性4人が集まった「めだか荘」。受付係の遥香は恋愛願望が強すぎてうまくいかない。俳優の那智は売れるために脱ぐかどうか悩んでいる。広告代理店で働く楓は彼氏にプロポーズされながらも仕事への思いで踏み切れない。不動産業で働く柚子は父親や弟との関係にもどかしさを抱えている。性格や職業がバラバラな4人はそれなりに楽しいルームシェア生活を送っていたが、リニア開通に伴う都市再開発のため突然、変化の時を迎える。

 「まず人物設定を考えました。名前、年齢、職業、好きなブランド、外見のシメージ…。私は恋愛ドキュメンタリーが好きなので、そこからヒントをもらいました。そして、恋愛、仕事、結婚、家族という4つのテーマを決めました。4人に私自身の要素を入れたつもりはなかったのですが、過去に小説を出したことがある内田眞由美ちゃん(元AKB48)のアドバイスがほしくて読んでもらったら『全員に里英ちゃんらしさがちょっとずつ出ている』と言われました。結局、自分が出ちゃうんだな…と思いました」

 小説には、AKB在籍中に他のメンバーと共同生活を送ったことや、2012年にリアリティー番組「テラスハウス」に出演したこと、21年に俳優の笠原秀幸と結婚したことなど、自身の体験が生かされている。

 「女性同士の友情、共同生活のリアリティーはAKB時代のものが反映されていると思います。テラスハウスに出演して、その後、総選挙の順位が落ちちゃいましたが、あそこでの生活の経験が生きました。テラスハウスでもめたようなことがこの小説に出てきます。結婚をテーマにしている楓の話は私が結婚する前に書いたのですが、その後、自分が結婚して、より分かったことがあったので、ほかの3人の話を書いた後にかなり書き直しました」

 執筆の期間は2年近く、文章の量はおよそ10万字に及んだ。

 「最後に確認作業で読んだ時、面白いと思いました。書いている途中は自分の語彙力のなさ、教養のなさに打ちひしがれていたのですが、読んでみると、いま出せるものを出し切った感じがありました。後悔はないです。さっしー(指原莉乃)に読んでもらったら『アラサーの解析度が高すぎてエグい』と言ってくれました。全体的には温かい話なのですが、女性が読むと結構ぐさっと来るところがあるのではないかと思います。共感してもらえると、うれしいです。そして、できれば、この作品を映像化したい。4話完結のドラマにしたい。それが夢です」

 AKB時代からのファンへの思いもある。

 「卒業した後、全く声が掛からなくなっていたので、みんな忘れちゃったんだろうと思っていたのですが、最近、髪の長さが全盛期のAKBの頃くらいに戻ったからか、『昔好きだった』という人から声を掛けられることが多いんです。先日はある現場で女優さんに『実は、きたりえ推しだったんです』と言われました。その人は昔、AKBの握手会やイベントに行くためにバイトしていて私と2回握手したことがあるそうです。今は私より売れているのですが、『青春をありがとうございました』と言ってくれて、私は誰かの青春だったんだ…と思ってジーンと来ました。だから、昔AKBを好きだった人にも、書店でこの小説を見た時、思いだしてもらって、手に取ってもらえればうれしいです」

 小説にはAKB時代の生活が反映されているものの、アイドルに関する記述はない。今後も作家活動を続けるならば、アイドルの世界を描いた作品も読んでみたいところだ。

 「今は全てを出し切った感じですが、もしも2作目を書くとしたら、アイドルを書きたいな、と思っています」

 新人作家への期待は大きい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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