勝負の“時”は…藤井王将「リード奪って一気に寄せる」中盤、羽生九段は「復活マジック」終盤

[ 2023年1月6日 05:21 ]

令和の天才VS平成の怪物 王将戦8日開幕(2)

タイトル戦で初対決する羽生九段(左)と藤井王将
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=はタイトル戦無傷の11連覇中と無双状態だ。その強さに磨きがかかってきたのは昨年中盤以降。藤井自身も課題に挙げていたタイムマネジメント能力が、異常な速度で向上している。

 過去の全タイトル戦勝利局で持ち時間を平均何分残したのか調べた。20年は17分強。翌21年は25分弱と微増したが、21勝のうち4局が1分将棋に追い込まれていた。22年は36分。ただ夏の王位戦、秋の竜王戦に限ると64分に跳ね上がる。特に竜王戦では第4局の2時間残しを筆頭に、4勝全てで1時間以上を余した。

 デビュー当時から前半戦で持ち時間を湯水のごとく消費する習慣で知られる藤井。「しっかりと考えることは妥協したくない」と、棋風に変動は見られないが、中終盤でリードを奪うと、遠慮などみじんも見せず一直線に寄せ切ってしまうのが直近の傾向。藤井は「その意識は持っています。やはり1分将棋になると厳しいですから」と説明した。

 対する羽生善治九段(52)は99冠を奪取した時代に対戦相手を震え上がらせた「羽生マジック」の復活が心強い。昨年の挑戦者決定リーグ、渡辺明名人(38)=棋王との2冠=戦で62手目に見せた[後]4五歩が典型例。四段目に浮いて追い込まれつつあった飛車の稼働域が一気に広がる好手で、相手の戦意を瞬時に削った。

 永瀬拓矢王座(30)戦でも終盤に自王の右横へ歩を2枚並べる絶妙な受けを披露し、相手をうならせている。「第一感ではなかったが、いろいろ考えているうちに思いついたんです」と涼しい表情の羽生。いずれも全盛期をほうふつさせる羽生マジックだった。
 以上の事例を組み合わせると、中盤に大差がつけば藤井の圧勝、終盤競り合って相手を慌てさせれば羽生に分あり、という予測が成り立つ。これといった弱点が見当たらない藤井も昨年のタイトル戦4敗の平均残り時間は6分で、時間切迫には苦手意識がある。
 「時間管理の巧者」VS「熟練魔術の達人」。これも7番勝負の大きな見どころだ。 (我満 晴朗)

 ≪東西で「指し初め式」≫5日は東西で年初恒例の祈願祭と指し初め式が行われた。大阪市の関西将棋会館では谷川浩司17世名人(60、写真右=日本将棋連盟提供)ら関西在住の有力棋士が参加。谷川は藤井より一世代上のトップ棋士らに「より一層の奮起を期待したいです」をげきを飛ばし、王将戦挑戦者決定リーグで藤井への挑戦権を羽生と争った糸谷哲郎八段(34)は「気持ちを切り替えて心機一転頑張っていきたい」と気を引き締めた。関西所属で愛知県在住の藤井は例年同様、不参加だった。一方、東京都渋谷区の将棋会館に隣接する鳩森神社では羽生をはじめ首都圏在住棋士が登場した。

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