「エール」病に冒された三郎 唐沢寿明が息子たちへの思い「真の幸せ者」福島弁に苦労し自虐も「才能ない」

[ 2020年6月10日 08:15 ]

「エール」唐沢寿明インタビュー(上)

連続テレビ小説「エール」。病に冒された三郎(唐沢寿明・左)は裕一(窪田正孝)に何を語る?(C)NHK
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 俳優の唐沢寿明(57)がNHK連続テレビ小説「エール」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)にレギュラー出演。頼りなくも憎めない主人公・古山裕一(窪田正孝)の父・三郎を時にコミカルに熱演している。福島弁に苦労し「もう僕は福島弁の才能がないとしか言いようがないです(笑)」と自虐。10日に放送された第53話で、三郎が病に冒されていることが判明したが「これまで裕一ばかりをかわいがっていたように見えた三郎ですが、彼には彼なりの考えがあった。それを息子たちにきちんと伝えるんです。それが、三郎が父親として整理しておかないといけないと心に決めていたことだったんでしょうね。(弟の)浩二(佐久本宝)も随分救われたんじゃないでしょうか」と心情を明かした。

 朝ドラ通算102作目。男性主演は2014年後期「マッサン」の玉山鉄二(40)以来、約6年ぶりとなる。モデルは全国高等学校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」などで知られ、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏(1909~1989)と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏。昭和という激動の時代を舞台に、人々の心に寄り添う曲の数々を生み出した作曲家・古山裕一(窪田)と妻・関内音(二階堂ふみ)の夫婦愛を描く。

 唐沢が演じる三郎は、福島の老舗呉服屋「喜多一(きたいち)」の4代目店主。三男のため店を継ぐことはないと思っていたが、長男・次男が相次いで亡くなり、店を継ぐことに。子どもたちには自分の好きな道を歩んでほしいと願っている。2歳年下の弟・浩二が生まれたお祝いに蓄音機を買い、裕一が音楽に親しむきっかけになった。口癖は「オレに任せとけ!」。

 唐沢の朝ドラ出演は1988年(昭63)後期「純ちゃんの応援歌」、2016年(平28)前期「とと姉ちゃん」に続き、4年ぶり3作目。昭和、平成、令和と3時代にわたる朝ドラ出演に「とても光栄です。連続テレビ小説は時代が変わっても、どこか変わらない空気が流れていると感じます」と感慨。「実は初めて台本を読んだ時に、パッと浮かんだ人物がいるんです。僕の知り合いで、三郎にとても雰囲気が似た人がいるんですよ。いつもニコニコしていて、場合によっては怒ってしまいそうなことも、その人だと、なぜか許してしまう。何とかその人の雰囲気が出せないかなぁと思いながら、演じました」と役作りに生かした。

 「小さい頃から運動が苦手で、いじめられがちな子でしたから、三郎は裕一のことをずっと心配していたんじゃないでしょうか。弟の浩二の方がしっかりしているものだから、どうしても長男である裕一に目が行きがちだったのかなと。ですから、「裕一君には音楽の才能がある」と藤堂先生に言われた時は本当にうれしかったと思います。最終的にそれが成功するかどうかは別にして、息子の夢を応援してやろうと素直に思ったはずです。でも考えてみれば、三郎が商売下手だったということが、息子にとってプラスに働いたのかなとも思います。商売上手であれば、ずっと仕事ばかりしていて、子どものことは母親に任せっきりだったでしょう。だからこそ、三郎は店をほっぽりだしてでも、裕一のことを真剣に考えられたんじゃないかな」

 唐沢の福島弁が魅力的だが「大変ですね~。毎回、自分でもかなり練習して撮影に臨んだのですが、お芝居を合わせると、うまくできない。ちょっと発音が違うだけで、全然違う言葉に聞こえるようで…」と苦労を吐露。5月8日に生出演した同局「あさイチ」(月~金曜前8・15)の冒頭、福島弁によるあいさつは、代表作の1つ「白い巨塔」でも共演した福島県郡山市出身の西田敏行(72)にレクチャーを依頼。「言いたい文面を西田さんに吹き込んでもらって、その音源を何度も何度も聞いて練習したのですが、それでも難しかったですね。もう僕は福島弁の才能がないとしか言いようがないです」と苦笑いした。

 この日放送された第53話は、1933年(昭8)。「船頭可愛や」がヒットした裕一(窪田)は恩師・藤堂先生(森山直太朗)から小学校の校歌作曲を依頼され、その披露会のため、約2年半ぶりに福島に帰省。三郎(唐沢)が招いた懐かしい仲間たちとの宴会が始まる。皆が楽しく飲んでいると、弟の浩二(佐久本)が役場の仕事から帰宅。浩二は相変わらず裕一に冷たく、三郎がお酒を飲んでいることにもイラ立っているのだった。音(二階堂)は三郎の体調が気になり…という展開。

 そしてラスト。浩二は「父さん、もう長くねぇんだ。胃がんだって。もう手の施しようが…。父さんの前で、そんな顔、絶対にすんなよ。オレたちだって、父さんの身体、気遣いながら、必死に隠してきたんだ。もしバレたら、タダじゃおかねぇかんな」。裕一は「ウ、ウ、ウソでしょ…。だって、あんな元気そうだったのに…」と狼狽えるしかなかった。

 唐沢は「親は子どもより先に老いていくもので、こればかりは順番ですから仕方ないですよね。ずっと生きてたら、死神博士みたいになっちゃうから(笑)。第11週(6月8~12日)は、三郎の息子たちへの思いが描かれる週でもあります。これまで裕一ばかりをかわいがっていたように見えた三郎ですが、彼には彼なりの考えがあった。それを息子たちにきちんと伝えるんです。それが、三郎が父親として整理しておかないといけないと心に決めていたことだったんでしょうね。浩二も随分救われたんじゃないでしょうか」

 11日以降、三郎が裕一と2人きりで「おまえらのおかげで、いい人生だった。ありがとうな」と告げるシーンがある。「とても印象的でしたね。人間って、やっぱり誰かのおかげでいい人生か、そうでないかが決まってくるものですよね。特に三郎は、周囲のみんなに助けられて生きてきた人。裕一だけでなく、まさ(菊池桃子)や浩二や店のみんなに支えられながら生きてきた人です。演じながら『みんながいたから幸せだった』と心から思える場面でしたし、三郎のように最後に幸せだったと言える人こそが真の幸せ者なんだと思いました」と振り返った。

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