囲碁界にも“新しい風” 絶対王者・井山裕太6冠と若武者たち

[ 2018年10月23日 10:30 ]

井山裕太6冠
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 順当といえば順当すぎる結果だった。将棋の藤井聡太七段(16)が17日、自身最後の出場となった新人王戦で16歳2カ月の史上最年少での優勝を果たした。公式戦29連勝をはじめ数々の記録を打ち立てた昨年度の年度表彰でも“新人賞”に選出されており、若手としてやるべきことはいよいよ全てやり尽くした感がある。

 お隣の囲碁界にも、トップ棋士への登竜門とされる新人王戦がある。主催新聞社が同じで、表彰式も将棋と合同で行われている。出場資格も六段以下または25歳以下で、これも将棋と似ている。こちらは10月1日、通信制高校2年の広瀬優一・二段(17)が、歴代2番目に若い17歳1カ月で優勝した。

 それでは歴代最年少記録はというと、第一人者の井山裕太6冠(29)ではなく、16年に大西竜平三段(18)が持つ16歳6カ月。囲碁の新人王戦はその名に反して、過去の優勝者は実は全て2度目以降の出場で、初出場での優勝は大西が初めてだった。

 大西は新人王の最年少記録以外でも、多くの点で将棋の藤井に先行してきたスター候補だ。小学生にして韓国への囲碁留学で腕を磨き、15年に14歳でプロ入り。16年3月には昨年死去した故杉内雅男九段と、95歳対15歳という史上最大の「80歳差対決」に勝ち、同年の囲碁界全棋士で堂々の勝率1位に輝いた。同じ年の12月、少し遅れて藤井がデビュー戦で当時現役最年長の加藤一二三・九段(78)を破った形だ。藤井の記録が突出しているが、大西も十分に怪物級で、もっと騒がれてもおかしくない。

 今年は7大タイトル戦最高峰の棋聖戦で、最下位のC1リーグから挑戦者決定トーナメントに進出。同い年のライバルで、17年新人王の芝野虎丸七段(18)との“竜虎対決”を制して勝ち進んだ。準決勝で河野臨九段(37)に敗れたものの、7大タイトル挑戦は時間の問題とみられている。

 囲碁界は井山の7冠独占がしばらく続いたが、8月に台湾出身で15年新人王の許家元(きょ・かげん)碁聖(20)がその一つを奪った。群雄割拠時代に突入しつつある将棋界と違い、絶対王者の1強状態を20歳前後の新しい世代が崩そうとする構図だ。近い将来、新人王から新たなスターが生まれるのを楽しみにしている。(記者コラム・矢吹 大祐)

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2018年10月23日のニュース