王将戦・戦国時代(8) 豊島二冠 奇襲仕掛ける信長のように“斬り合い”歓迎

[ 2018年10月5日 18:00 ]

織田信長に扮する豊島将之二冠(撮影:浦田 大作)
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 将棋の第68期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の挑戦者決定リーグ戦が開幕した。昨期の残留4人に加え、予選を勝ち抜いた3人の計7者による、棋界で最もハードな総当たり戦。果たして久保利明王将(43)に挑む権利を手にするのは…。参加7棋士に加え、7番勝負で挑戦者を待ち受ける久保王将の8人が戦国武将に扮(ふん)し、それぞれ心境を語った。全8回の連載をお送りする。

 豊島将之二冠は織田信長を選んだ。「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」の激しさとは対照的な穏やかな人柄。愛知県出身くらいしか共通点が見えない指名について、「戦いにスピード感がある」として、桶狭間の戦いに表れる奇襲と、直線的な斬り合いを好む棋風を重ねた。

 豊島は昨期久保利明王将(43)に挑戦し、2勝4敗で敗れた。当時無冠だったが7月、棋聖戦で羽生善治竜王(48)から3勝2敗で奪取した。

 挑戦5度目での初タイトル。同時に複数タイトル保持者が消え、8つを8人で分け合う戦国時代を演出した。複数タイトル保持者がゼロになるのは7つを7人で分けた1987年以来31年ぶり。

 そして先月決着した王位戦では菅井竜也七段(26)から4勝3敗で2冠目を勝ち取った。自らつくり出した乱世に自ら幕引きするような独り舞台。ただ一人の複数タイトルホルダーとなり、今回王将挑戦権を目指す。

 昨期は振り飛車党の久保に、居飛車党の豊島が飛車を振って「相振り飛車シリーズ」と呼ばれた。その思惑を「自分の良さが出ると思った」とし、相振り飛車の攻撃と守備が向き合う戦型が、豊島好みの激しい展開に導けると説明した。

 ところが結果が出ず、その後の棋聖戦や王位戦での振り飛車党との対局では、居飛車を貫いた。「内容は微妙な将棋もあったが結果は出た」。王位戦では振り飛車党の菅井にも居飛車で通した。

 「いろんなことを試してはやめてを繰り返している」。戦型だけではない。勉強方法、対局での時間配分もそう。不断の試行錯誤に活路があるとの哲学は、超新星の存在を視界に捉えるからだった。

 「今でも凄いレベルの将棋を指す。どんどん強くなって将来、さらに凄いレベルの将棋を指す可能性が高い。その時に、自分が戦えるようにしたい」。藤井聡太七段(16)との公式戦は昨年8月のみ。結果は豊島が勝った。それでも意識せずにいられない指し手の輝き。16歳を仰ぎ見るような言葉に2冠の慢心はなかった。(筒崎 嘉一)=終わり=

 ?豊島 将之(とよしま・まさゆき)1990年(平2)4月30日生まれ、愛知県一宮市出身の28歳。07年に16歳でプロ入りし、平成生まれ初の棋士に。タイトル戦登場は6度、ほか16年JTプロ公式戦優勝。順位戦A級、竜王戦1組在籍。1メートル66。

 このインタビューの全文はlivedoor NEWSに掲載される。

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