安室奈美恵 “伝説”はさらに神話化 自ら進んで選んだ「私人」への道

[ 2018年9月17日 09:00 ]

安室奈美恵ラストライブ 熱唱する安室奈美恵
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 【記者の目】安室奈美恵はなぜ引退するのか。今後どうするのか。その答えが明確でないまま、安室は“現役最後の日”にファンの前にあえて登場せず、26年の歌手人生の幕を閉じた。

 「本人は“普通のおばさんになる”って笑って言ってますよ」。冗談ぽく聞こえるが、関係者は「本心では」と推察する。今からちょうど40年前。「普通の女の子に戻りたい」と解散理由を語ったのはキャンディーズ。言葉は似ているが、ネガティブな意味合いもあった後者に対し、安室にとっての「普通のおばさん」は自ら進んで選んだ「目的」だ。絶頂期に終えるアスリート的な美学に加え、最愛の長男が成人するタイミングなど、さまざまな「理由」がささやかれているが、公人から「私人」になることで、自身や家族のプライバシーを守ることが目的の一つであることは間違いない。

 だから、今回の引退劇は“仕方なく”起きたものではなく、じっくり練られた戦略あってのもの。ベスト盤の収録曲のほとんどを歌い直すことで、デビュー時から約20年間の楽曲に関する権利を自らも保有し、ラストツアーのDVDに関しても同様。ライブの売り上げを含め、昨年の引退発表からの1年間で300億円以上を稼ぎ出した。歌やファッションだけでなく、自らが選んだ道を自力で切り開いてきた「生き方」までもが同世代の女性や後輩歌手たちの指針となった彼女だが、最後に「引退ビジネス」の成功法まで残した。

 歌謡曲だけでなく、J―POPとも決別した唯一無比のブランディングに成功し、最後まで貫いた安室。ラストデーにファンと同じ会場にいたのに本人の直接の言葉はなく、謎めいた部分を残すことで“伝説”はさらに神話化した。(編集局次長兼文化社会部長・阿部 公輔)

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