「直虎」最終回、視聴者を魅了し続けた理由 史実の間を埋めるエピソードが秀逸

[ 2017年12月17日 08:00 ]

ついに最終回を迎える柴咲コウ主演の大河ドラマ「おんな城主 直虎」(C)NHK
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 女優・柴咲コウ(36)主演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(日曜前8・00)が17日に最終回を迎える。今作を通じて突如歴史の表舞台に登場した直虎。史料が少なく、放送開始までは人物像が分からない“ハンデ”もあったが、脚本を手掛けた森下佳子氏(46)の躍動感あふれる物語と柴咲らキャストの好演が高い評価を得ている。1年間視聴者を魅了した理由について迫った。

 大河ドラマ56作目。男性の名で家督を継ぎ、戦国時代を生き抜いた女性城主・井伊直虎の激動の生涯を描いた。脚本はNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で向田邦子賞、橋田賞に輝いた森下氏。TBS「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「JIN―仁―」「とんび」「天皇の料理番」などで知られ、初の大河脚本となった。

◆脚本の森下氏「方程式を解くのと似た感覚で」エピソード作り◆

 歴史好きや専門家以外にはほとんど知られていない人物を題材としたが、史実の間を埋めるドラマ内のエピソードが秀逸。井伊家の財政を立て直すための新たな産業として始めた「木綿づくり」や、負けん気の強い万千代(のちの直政、菅田将暉)が創意工夫を加えた「草履番」など“なるほど”と唸ってしまう場面が多々あった。

 森下氏はインタビューで「史実から拾うのとは別に、パーソナルな部分を大切にしました。残っている痕跡とキャラクターの個性を組み合わせて作品をつくりあげていった感じです」と説明。エピソードを作り込む作業について「方程式を解くのと似たような感覚。こういう話をつくらないといけないときに、こういう条件と条件があります。さて、どのような解が導き出せるでしょうか?というような…。解けたときに凄くスッキリする感じ。しんどいけど楽しい作業でした(笑)」と振り返る。

◆「恋愛」「エモい描写」女性視聴者も支持、囲碁打つ演出は乱世を絶妙表現◆

 戦国の世を絶妙に表現した演出は「囲碁を打つ」場面だろう。直虎は小野政次(高橋一生)と盤を挟んで“心と心の会話”を繰り広げ、徳川家康(阿部サダヲ)は一手打っては反対側に座って一手打つ「一人囲碁」にいそしんだ。直虎の大叔父、南渓和尚役の小林薫(66)は「井伊家の運命も碁のようでした」といい「碁や将棋は一手打つだけで盤面、情勢が大きく変わる。碁で周りを囲まれたように、危機を迎えた場合はどうやってすり抜けるか考える。好機をつかんだときは強気の攻めをするべきか考えていたと思います」と自身の解釈を述べた。

 男性だけでなく女性視聴者の心もつかんだ。「恋愛」「エモい描写」という要素が作品全体に浸透。直虎と井伊直親(三浦春馬)、政次、龍雲丸(柳楽優弥)との三者三様な恋愛が描かれた。幼なじみで井伊家の筆頭家老・政次は、井伊家のために自らを犠牲にして凄惨な死を遂げる。第33回「嫌われ政次の一生」では磔(はりつけ)にされた政次を、直虎が槍で突き刺すシーンが「壮絶すぎる…」とエモーショナルな反響を呼んだ。「何をするにもダイナミックなところが時代劇の良さ」と森下氏。「好きな相手が明日殺されるかもしれないという、現代ドラマでは成立し得ないことができる。話の中にダイナミックな情緒の部分や恋愛を書きたかった」と説明した。

◆ついにフィナーレ、柴咲コウ「面白い台本と出会えてよかった」◆

 幾多の困難を乗り越えてきた直虎と井伊家のストーリーもついに最終回「石を継ぐ者」を迎える。明智(光石研)が決起した本能寺の変により信長(市川海老蔵)は討ち取られ、直虎の手助けで家康は無事、三河へと戻る。明智が京を追われたと聞いた直虎は龍雲丸(柳楽優弥)と別れて堺を後にする。井伊谷に戻った直虎は保護していた明智の遺児を逃がそうとするが、万千代(菅田将暉)は身柄を徳川に渡すよう主張する…。

 最終回について森下氏は「本当に最終回を見てほしいです。おかしな表現かもしれませんが、パアーと終わっていく最終回。ここに光が当たるために今までの出来事があったのだなあと思います。はじけた感じ。私も不思議な感じでしたね」とアピール。柴咲はクランクアップ前のインタビューで「面白い台本と出会えてよかった。(物語が)終わってほしくないという思いもありますね」とニッコリ。作り手たちの思いが結集したフィナーレに注目だ。

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