【俺の顔】西田敏行 角栄さん演じたい 人たらしの才は“共通点”

[ 2017年9月17日 09:40 ]

映画「アウトレイジ最終章」の西野になりきり迫力の表情を見せる西田敏行
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 俳優の西田敏行(69)が役者生活50年を迎えた。硬軟自在の演技はもちろん、歌手やバラエティー番組の司会も務めるエンターテイナー。朗らかな笑顔を封印し、映画「アウトレイジ 最終章」(10月7日公開)ではヤクザ役で凄みを利かせている。古希を目前に控えても芝居への欲は尽きず、「職人的俳優でいたい」と意気軒高だ。

 どんな場でも率先して盛り上げ、代表作「釣りバカ日誌」のハマちゃんを地で行くようなチャーミングさ。「子供の頃から愛嬌(あいきょう)はよかったです。農作業してるじいちゃんとかによく“こんにちは”と声を掛けたりしていたと、おふくろに言われました」と人懐こい笑顔を見せる。

 「アウトレイジ 最終章」では、その顔を一変。暴力団組織「花菱会」の若頭・西野役。コワモテ俳優が集結した“顔面バトル”の中でも迫力は随一だ。北野武監督(70)が裏社会に生きる男たちの仁義なき抗争を描く人気シリーズ。2012年の前作に続く出演で「アウトレイジに出ると、スポーツのイベントに参加した後の爽快感みたいなものがあります。ワルをやらせてもらうのも気持ちいい」と楽しんだ。

 テレビを筆頭に暴力などに対する自主規制が強まる中、怒号も銃弾も飛び交うバイオレンス満載の作品。「演じていて何が楽しいかというと、放送禁止用語や人を罵倒したり、バンバン撃ったりする時に、言いようのないカタルシスを感じるんです。演じる側にとってのカンフル剤みたいなものが、この映画にはあります」

 極悪非道の役ではあるが、西田が演じれば人情味もにじむ。「性善説で、人間はいろんな状況や社会環境で非行に走ると思っている。西野も生来の悪い男ではなく、社会的状況がこの男をつくってしまったというところもどこかに感じてほしい」

 昨年は頸椎(けいつい)亜脱臼と胆のう炎の手術を受け入院。退院直後の同7月から撮影に入った。若頭補佐役の塩見三省(69)は14年に脳出血で入院しリハビリを経ての出演。「5年前は塩見も俺も元気だったけど、今回は病気の部分でちょっと影を背負っちゃったかな」。その影が一方で、凄みとなってスクリーンに映し出されている。「逆に功を奏した部分もあって、そういう意味ではよかった」。

 子供の頃から映画が好きで、市川右太衛門、片岡千恵蔵ら人気役者に憧れ、俳優になると決意。1967年にデビューしてから半世紀がたった。

 「ようやってきたなと思います。撮影現場では自分が一番年長ということが多くなって、スタッフの動きを見ているといとおしく感じるようになりました」

 11月に70歳になる。「子供の頃は70歳なんてほとんど死にかけたじいさまだと思ってました。いざその立場になってみると、まだまだ自分の中にいろんな可能性があるなと思い始めて、子供の頃の自分を戒めました」。

 経歴や年齢に甘んじず、新たな可能性を探る。今、演じたいと狙いを定めているのが田中角栄元首相だ。「日本人って、あの手のおやじに一種の憧憬(しょうけい)の気持ちを持ってますよね。清廉なおやじもいいけど、清濁併せのむようなおやじに引かれる。角栄さんを功罪合わせて演じてみたい」。

 剛腕ながら独特の魅力で人を引きつけた元首相と、相通じる部分もある。「豊臣秀吉や角栄さんのような人たらしの才は、ちょっとは俺の中にもあるのかな、なんて思っちゃったりもするんですよ」と白い歯を見せた。

 たけしからは「職人のような俳優」と評された。「たとえば陶芸や漆で芸術家が作って飾ってある芸術作品じゃなくて、日常の暮らしの中で使ってもらえて、使えば使うほど使いづやが出てくるもの。絵画でもその前に立つと圧倒される凄い作品じゃなくて、“玄関にちょうどいいわね”っていう絵。芸術家より、そういう職人のような俳優でいたい」

 体調は良く、定期的に通院しながらジムにも通う。「トレーナーが福山雅治さんと同じ人で、これはちょっと自慢です。福山さんみたいにシュッとしたいと思って頑張ってるけど、なかなかうまくいかないですね」

 天性の親しみやすさで、人の心をつかむ職人俳優。これからも技を磨き続ける。

 ≪ゴリラに癒やされた≫俳優を目指して中学卒業後に福島県から上京。高校に通っていたが、ホームシックになると、足が自然と福島に帰る人の玄関口・上野駅に向かった。そんな時に励まされたのが、97年に死んだ上野動物園のゴリラのブルブル(雄)。「故郷のアフリカを遠望しているような目で空を見上げていた。“俺と同じ心境にいるんだ”って気持ちをダブらせて大好きになっちゃって、学校をさぼってブルブルに合いによく行きました」。最近は動物園に行くことはないが、「動物の赤ちゃんをテレビで見ると癒やされます」と話した。

 ◆西田 敏行(にしだ・としゆき)1947年(昭22)11月4日、福島県出身の69歳。67年にTBSドラマ「渥美清の泣いてたまるか」でデビュー。70年に青年座に入団し「情痴」で初舞台。主な出演作はドラマ「西遊記」「池中玄太80キロ」、映画「敦煌」「ゲロッパ!」など。「釣りバカ日誌」シリーズは88〜09年まで22作に主演。歌手として「もしもピアノが弾けたなら」などでNHK紅白歌合戦に4回出場。08年紫綬褒章受章。朝日放送のバラエティー「探偵!ナイトスクープ」の司会を務めている。

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