“三之助”以外の組み合わせも? 楽しみな次代の歌舞伎スター候補たち

[ 2016年2月12日 14:11 ]

節分祭に参加した(左から)中村時蔵、眞秀くん、尾上菊五郎、尾上菊之助、和史くん、中村吉右衛門

 3日の節分の日には、各地の寺社などで芸能人、著名人らが豆まきを行った。東京の歌舞伎座でも「節分追儺式(ついなしき)」が開催され、2月公演に出演する俳優の「鬼は外!」「福は内!」の威勢のいい声が劇場に響いた。

 毎年、客席後方に座っている観客も舞台前まで駆け寄って「豆入り大入り袋」をもらおうとするほど盛り上がるが、今年は特に熱気を帯びていた。尾上菊五郎、中村吉右衛門という人間国宝とともに、2人の孫で尾上菊之助の長男、和史くん(2)、菊五郎の長女で女優寺島しのぶの長男、眞秀(まほろ)くん(3)が舞台に登場。一家総出で歌舞伎座の鬼退治となったからだ。特に和史くんは歌舞伎座の舞台に立つのは初めてだったこともあり、未来の人気俳優の劇場デビューとしても注目を集めた。

 菊五郎はまだ尾上菊之助を名乗っていた1960年代、市川新之助(2013年に死去した市川団十郎)、尾上辰之助(現尾上松緑の父)とともに「三之助」と称され、歌舞伎界を盛り上げた。それから30年後の90年代後半には、3人の長男、尾上菊之助、市川新之助(現市川海老蔵)、尾上辰之助(現尾上松緑)が「平成の三之助」と呼ばれ、アイドル並みの人気を誇った。

 さて、和史くんはどうなるのだろうか。市川海老蔵の長男、觀玄くん(2)とは同い年だが、尾上松緑の長男、藤間大河さんは10歳で、すでに尾上左近の名前で活躍中。「三之助」「平成の三之助」はいずれも同年代だったが、“次代の三之助”はジェネレーションギャップが存在してしまう。三之助のようなくくりができれば、それだけで世間から注目を集め話題になるだけに、歌舞伎関係者によると「興行を主催する松竹も、どんな組み合わせができるのか思案をめぐらせている」という。

 次世代のスター候補は、ほかにもいる。中村勘九郎の長男七緒八くん(4)、次男哲之くん(2)だ。こちらも故中村勘三郎さんの孫ということで期待がかかっており、七緒八くんが歌舞伎役者の名前を名乗り初舞台を踏む日が待たれている。「三之助」にこだわらなければ、最年長の七緒八くんを筆頭として、和史くん、觀玄くん、哲之くんの4人で売り出していくという手もある。

 歌舞伎座はこの4月、新開場から3年目を迎える。松竹関係者によると「開場フィーバーもひと段落し、チケットの売り上げも横ばいになってきた」という。外国人観光客の急増、東京五輪・パラリンピックという追い風はあるものの、長い目で見れば、スターを生み出し、話題を作っていかなければいけない。十数年後、衣装が一瞬で変わる歌舞伎の演出「早変わり」のような、あっと驚くグループが誕生しているかもしれない。(記者コラム)

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2016年2月12日のニュース