市村正親 「おっかさん」山田五十鈴さんを悼む

[ 2012年7月12日 06:00 ]

故・山田五十鈴さんのお顔に涙ながらに語りかける市村正親

 多臓器不全のため9日に95歳で亡くなった女優の山田五十鈴(やまだ・いすず、本名美津=みつ)さんの通夜が11日、東京都港区の青山葬儀所で営まれた。母親のように慕った「養子会」の市村正親(63)ら約600人が参列。市村は「私の分まで頑張ってくれと言っているようだった」と悼んだ。

 市村は「あなたはこれからもいい仕事をしなさい。天国の桟敷席で見てるわよと、艶っぽい声が聞こえた気がしました」と神妙な表情。92年の舞台「ミス・サイゴン」での演技にホレ込んだ山田さんが「あの俳優はだれ?」と楽屋を訪ねて親交を深めた。以来、「おっかさん」と慕い続けてきた。00年には舞台「時は…今」で共演。遺影はその際に撮った一枚で「当時のことを思い出します」と別れを惜しんだ。

 山田さんは、演技力だけでなく、容姿もいい俳優、演出家を指名して「養子会」を結成。体調を崩して入院生活を送るようになった02年以降は、養子会による誕生日パーティーが楽しみだった。朗読劇を一緒に行ってきた高嶋政伸(45)もその一人。「あんな大スターが僕みたいな人間と朗読会をしてくれたなんて、とんでもないこと。“心は温かいのに手は冷たいのね”と僕の手を握ってくれた感触が忘れられない」と振り返り「過ごした時間は、役者として人間として大きな財産。先生はフィルムだけでなく、僕の中にも永遠に生き続けます」と涙を流した。

 会場では山田さんが舞台「たぬき」で弾いた三味線による「たぬき」「ふきよせ」が流され、ファン投票で選ばれた「五十鈴十種」のポスターが張られた。「華美なことは嫌い」との遺志で香典や花は受け付けない。祭壇は菊など白い花のみで、「天皇陛下」と書かれた祭粢料(さいしりょう、皇族が贈る香典にあたるもの)の包みと、00年に女優で初めて受章した文化勲章だけが飾られた。棺の中の山田さんは指先をマニキュアで染め、頭には深紫色のターバンを巻き、オレンジ色のワンピース姿。「養子会」の俳優らが贈ったスカーフやヒザ掛けも入れられた。

 葬儀・告別式は12日午前11時から同所で営まれ、俳優の西郷輝彦(65)らが弔辞を読む。

 ▼三田佳子(映画「山麓」などで共演)王道を行かれた、圧倒的な存在感のある方でした。美しいものを美しく見せるのではなく、ある醜さを持って表現するお芝居でした。まねできませんでした。

 ▼沢口靖子(90年の舞台「女ぶり」で共演)新人にも同じ目線で接してくれて、器の大きな人だと思いました。大先輩なのに威圧感もなかった。芸一筋に生きられ、人間的にも素晴らしい方でした。

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