三島由紀夫の割腹自決、ARATA主演で映画化

[ 2011年5月2日 06:00 ]

三島由紀夫を演じるARATA

 作家三島由紀夫の割腹自決が映画化される。「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」「キャタピラー」がベルリン国際映画祭に出品された若松孝二監督の新作で、「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」。NHKドラマ「チェイス~国税査察官~」で注目を集めた俳優のARATA(36)が主演する。来春公開予定。

 三島が事件を起こしたのは1970年11月25日。左翼運動に対抗するため組織した「楯の会」の会員を引き連れ、東京・市ケ谷の陸上自衛隊駐屯地に乱入。バルコニーから、憲法改正のため自衛隊に「決起」を呼びかける檄(げき)文をまき、演説をした後、割腹と介錯という古典的方法で自決した。

 当時、ノーベル文学賞にもっとも近いと言われた国民的作家による事件は社会に大きな衝撃を与えたが、なぜ、こうした行動を取ったのかは40年以上がたった今もさまざまな解釈がされている。

 映画は主に68年の楯の会結成から自決までを描く。三島を介錯し自らも割腹自殺した早大生の森田必勝(まさかつ)ら若者たちの高揚と挫折にスポットを当てる内容。また、小説を書くかたわらボディービルや剣道などに励んだ三島の肉体や精神の遍歴にも迫る。

 三島をテーマにした作品にはフランシス・コッポラ氏とジョージ・ルーカス氏が製作、85年に米国で公開された映画「MISHIMA」(85年)などがある。この作品では幼少期からの人生が描かれ、故緒形拳さんが主演した。昨年は没後40年にあたり、関連書籍が相次いで発行された。

 10数年前から企画を温めてきたという若松監督は「政治や世の中を変えようとした人や事件が忘れ去られようとしているのなら、それを撮っておくのが映画監督の務め」と説明。若者たちが命がけで活動する姿を通して「若い人たちに政治に関心を持ち、奮起を促したい」とも話す。

 三島役に抜てきされたのは「チェイス」で強烈な存在感を発揮したARATA。若松作品は「実録・連合赤軍」「キャタピラー」に続く出演で約2カ月にわたって剣道を練習。肉体改造も行ったといい「若者たちの心の息吹を描こうとする作品。モノマネをするのではなく、自分の感触でつかんだ三島像を膨らませたい」と意気込んでいる。

 「キャタピラー」でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞した寺島しのぶ(38)が妻役で出演。三島の死後の社会情勢を伝えるストーリーテラー的な役どころを務める。

 ◆三島由紀夫 1925年、東京生まれ。本名は平岡公威(ひらおか・きみたけ)。16歳の時、少年のけん怠を描いた「花ざかりの森」でデビュー。この時、初めて三島由紀夫のペンネームを使った。東大法学部卒業後、旧大蔵省に入るが9カ月で退職し作家活動に専念する。49年の「仮面の告白」で地位を確立。「潮騒」「金閣寺」などで人気作家となる。執筆活動の一方、右翼的な政治活動にも傾倒。自衛隊に体験入隊を繰り返すなどした。戦時中の入隊検査に不合格になったコンプレックスから、ボディービルやボクシング、剣道などに励むようになったとされる。

続きを表示

2011年5月2日のニュース