栗山英樹氏 大自然の中で整“美”された姿から平常心を学ぶ

[ 2024年1月24日 06:00 ]

ディープインパクトゲートの「意心帰」に触れる栗山CBO(撮影・高橋 茂夫)
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 侍ジャパン前監督の日本ハム・栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=62)による連載「自然からのたより」の新年第1弾は、レーティング世界一のまま引退して種牡馬となったイクイノックスなど名馬からの学びについて。北海道の雄大な自然の中に戻ったイクイノックスは、すでに種牡馬という次の役割へ準備を整えていた。大自然の中で、美しく整えられた姿から伝わってくるのは「平常心」の大切さという学びだった。

 世界一の称号のままターフを去ったイクイノックスは、雪に覆われた社台スタリオンステーションにいた。この時期に、北海道安平町の同所を訪れるのは毎年の恒例だ。名馬たちに合い、今は静かに眠る日本競馬界の至宝ディープインパクトのお墓参りをして、勝ち方のヒントをもらう。北海道の大自然の中で美しく整ったたたずまいを前にして、今年も大きな学びを得た。

 平常心
 私の心が整っていなければ
 その大切な決断が出来たかどうか
 いかに平常心が大切か、肝に銘じた瞬間であった

 この言葉は、尊敬する名将・三原脩さんが残したものだ。西鉄の監督として、あの偉大な鉄腕・稲尾和久さんを高校(大分・別府緑丘)時代に獲得するかどうか決断したときを振り返り、そう記している。当時「獲るか獲らないか、どちらでもいい」という存在だった高校生の稲尾さんを見に行ったとき、三原さんは平常心だったそうだ。人は心が整っていないと、相手のことを考えられず、判断を間違うことが多い。平常心だから「獲ろう」と決断できた。後に球史に名を残す大投手を獲得することができ、平常心の大切さを改めて確認できたという。

 イクイノックスに合い、その美しく整った姿に、三原さんの言葉がふと浮かんだ。洗練された中にも戦いの傷痕が残る荒々しさを見せ、これからの仕事が分かっている。ここに来て間もないのに、もう準備を整えている。その姿は美しくさえ感じた。馬は元々、自然豊かな草原を走り回る動物だ。北海道の大自然を生かした見事な環境の中、歴戦の名馬たちは次の役目を果たしていく。そこに心の乱れはない。伝わるのは平常心そのものだ。

 お墓参りの後、ノーザンホースパークにあるディープインパクトゲートを訪れた。荘厳で、自然と調和し、まさに整“美”されている感じだ。モニュメントに触れ、思いをはせる。彼の姿に感じたのも平常心だった。

 ▽ディープインパクトゲート 日本競馬界希代の名馬ディープインパクトの名を冠したモニュメント。北海道苫小牧市のノーザンホースパークで昨年6月に一般公開された。大きな門の形をした白大理石の「天聖」と黒御影石で作られた「意心帰」の2作品によって成り立つ。彫刻家・安田侃(かん)氏が制作した。春になれば、栗山氏の挿絵のように同ゲートの向こう側にディープインパクトが生まれ、その子孫たちが駆けるノーザンファームの牧草地を見ることができる。

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