阪神・近本 「出し切った」文句なしのMVP シリーズ14安打は53年川上哲治らを上回る歴代3位

[ 2023年11月6日 05:15 ]

SMBC日本シリーズ2023第7戦   阪神7ー1オリックス ( 2023年11月5日    京セラD )

<オ・神>表彰式で笑顔の(左から)森下、近本、山本(撮影・大森 寛明)
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 38年ぶりの日本一は、阪神・近本抜きには成し得なかった。大一番の第7戦で4安打。シリーズ3試合の3安打以上は史上4人目の最多タイ記録となった。今シリーズ複数安打を放てば全勝。頂点までの道のりをそのバットでけん引し、文句なしのMVP獲得だ。

 「一戦一戦、全力で戦ったと思うし、出し切ったと思う。結果的に勝てて良かった」

 18・44メートル離れた投手に対する準備は常人離れ。打席に入る時点で思考を巡らせている。直球をどう打つか、外角ならどこへ打ち返すか、狙いに反してスライダーが来たらどう打つか――。全球種に対し打球方向など数多くの選択肢を用意。2番として背中を追う中野は「凄く難しい」と驚き、新人の森下は「理解が追いつかない」と苦笑いする。近本だけに見える世界がある。

 結果を問われない状況ではさまざまな“重荷”を課して打席に臨んできた。「わざと追い込まれてみる」「直球を狙って打ち返す」。レギュラーシーズンからポストシーズンまで1番打者として立つ600以上の打席はもちろん、2月のキャンプから1打席たりとも無駄にしない。シリーズ通算29打数14安打、打率・483。14安打は53年の川上哲治(巨人)らを上回る歴代単独3位に立った。“打撃の神様”をも超える堂々の数字は、そのたまものだろう。
 天国の“恩人”も喜ばせた。関学大時代から愛用するバットを製造するヤナセ社の柳瀬隆臣社長が昨年11月19日に72歳で他界。もともと同社ではプロ選手への用具提供がなく、18年ドラフトでプロ入りした近本が「絶対ヤナセで」と譲らなかった。誠実な人柄と熱意にほだされ、セ・リーグでは近本だけに用具提供が始まった。大切な相棒で着実に数字を積み重ね、新人から今季まで5年間の通算773安打はプロ野球記録を塗り替えた。

 「今年1年間も長いシーズンだったですけど、しっかり僕たちも休んで、また来年に向けて頑張っていきます」。来季は追われる怖さも味わう。だが、それもきっと乗り越えられる。トップバッターに近本光司がいる限り――。(八木 勇磨)

 ○…1番で打率.483を放った近本(神)がMVP。全試合先発1番のシリーズMVPは60年近藤昭仁(大洋)、68年高田繁(巨)、76年福本豊(阪急)、79年高橋慶彦(広)、99年秋山幸二(ダイエー)に次ぎ24年ぶり6人目だ。

 ○…第7戦は4安打で猛打賞。シリーズの1試合4安打は20年第2戦の栗原(ソ)以来24人目(28度目)の最多タイ記録で、阪神では62年第7戦の吉田義男以来61年ぶり2人目。第1戦、第4戦に続くシリーズ3度の猛打賞は66年柴田勲(巨)、84年高橋慶彦(広)、02年二岡智宏(巨)に並ぶ最多記録となった。また、シリーズ14安打は歴代単独3位。

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