エンゼルス・大谷のトレード報道加熱 有力選手放出→若手獲得が米国流 8.2ギリギリまで目が離せない

[ 2023年7月22日 02:30 ]

ブルペンで投球練習する大谷
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 エンゼルス・大谷翔平投手(29)を巡るトレード報道が止まらない。大リーグ公式サイトは20日(日本時間21日)、球団はトレード期限である米東部時間1日午後6時(日本時間2日午前7時)の24~48時間前まで、決断を保留する方針と伝えた。「Monthly Shohei」7月編は、トレードの実現性や各球団の狙いや思惑などについて、現地米国の記者に緊急アンケートを実施。過熱する一方の米トレード事情の裏側に迫る。(取材・大リーグ取材班)

 なぜ大谷が放出されなければならないのか。米国で過熱する報道に、そう疑問に感じる日本のファンもいるだろう。前提として、大リーグではプレーオフ争いから脱落したチームがオフにFAとなる有力選手を抱えていた場合、優勝争いするチームに放出し、数年後を見据えて若手有望株を獲得することが、チームづくりの常とう手段という事情がある。

 「私は大谷をトレードすべきだと思うし、球界のほとんどの人が同じ考えだ。トレードに出せば、多くの見返りが得られる。残り2カ月半、彼をキープしてもオフにFAとなる。そうして退団した場合、移籍先球団から得られる補償はドラフトの指名権一つだけだ」

 スポーツ専門局ESPNのジェフ・パッサン記者が解説した。大谷ならば、交換要員として4~5人の若手有望株を得られる。エ軍はそうした長期的視野に立った球団経営がうまくいかず、14年を最後に8年連続でポストシーズン(PS)進出を逃してきた。

 ここまで49勝48敗の地区3位。ワイルドカードでのPS進出圏内に5ゲーム差と、PSを狙えるのか、諦めるのか、判断が難しい。大リーグ公式サイトはトレード期限である米東部時間8月1日午後6時(日本時間2日午前7時)の「24~48時間前まで大谷のトレードの決断を保留するだろう」と報じた。そこまで10試合の勝敗も見極めるという構えだ。

 編成権を強く握るアート・モレノ・オーナーの性格も大きく影響してくるという。球団公式サイトのレット・ボリンジャー記者は「スポンサー、広告主、日本の視聴者やネットアクセスなど、大谷がいることで球団は潤っている。残り2カ月半でもビジネスを考えれば、彼は手放さない」と指摘する。「この先10連敗すれば可能性は少し増えるかもしれないが、2%が5%になるくらいだろう」とも付け加えた。シアトル・タイムズ紙のラリー・ストーン記者は「大谷のようなスターをトレードしてしまうことで笑いものとなり、ファンの気持ちが自分から離れることを恐れている」と指摘した。

 エ軍が大谷との再契約を目指している点も無視できない。過去にトレード期限で「レンタル移籍」のように移り、オフにFAとなり所属元球団へ復帰したスター選手の例はわずか。ロサンゼルス・タイムズ紙のディラン・ヘルナンデス記者は「再契約を目指すならトレードしない方がいい。放出後に再契約は考えにくい。ペリー・ミナシアンGMは日本の文化も分かっていて、理解している」と話した。

 デッドライン24時間前の駆け込みトレードはあるのか。21日(日本時間22日)は8勝目を懸けてパイレーツ戦に登板する二刀流。複雑な事情が絡み合い報道が過熱する中、チームのために腕を振る。

 ▽「レンジャーズ・トゥデー」ジェフ・ウィルソン記者 モレノ・オーナーはプライドが高く、しばしば傲慢(ごうまん)になる。大谷を出した方が賢明とか、そうは考えない。そしてFAになっても他球団のオファーを金額で上回れると過信している。

 ▽「バーゲン・レコード紙」ピート・カルデラ記者 FAとなれば彼は99%ドジャースへ行くと思っている。担当球団のヤンキースは興味を示すかもしれないが、17年には面談の機会すらもらえなかった。大谷は南カリフォルニアを気に入っている。

 ▽「USAトゥデー」ボブ・ナイチンゲール記者 エ軍はもし今トレードしてしまったら、再契約のチャンスがなくなると恐れている。しかも2カ月半でも、大谷がいてくれることで入場収入や広告収入など特別な利益をもたらしてくれる。

 ▽「元ESPN記者」ジューン・リー氏 エ軍にとって最善の策は大谷をトレードで出すこと。10年以上チームづくりに失敗してきた。たとえ難しい決断でも、放出して多くの若手有望株を得る方が適切な選択肢なのは疑う余地がない。

 ▽「SBネーション」エリク・スティーブン記者 GMやフロントはトレードの見返りを期待してチーム強化したいだろうが、オーナーが許さない。エ軍は大谷に二刀流を許可することで契約したけど、今ならどのチームだって許可するだろう。

 ▽「ジ・アスレチック」ファビアン・アルダヤ記者 大谷をエ軍でプレーさせ続けることが、彼との再契約交渉へ向けてできる努力の一つ。他のチームなら確実にトレードすると思うが、エ軍は少し違った方法で運営するチームなので難しい。

 ▽「スポーツ・イラストレーテッド誌」マックス・グッドマン記者 大谷がトレードされることは彼にも、大リーグにとってもいいこと。彼のような選手が、実力通りの舞台でプレーできないのは残念。PSの場で輝きながらプレーする瞬間を誰もが望んでいる。

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