生体力学の成果で100マイル超えが珍しくないメジャー それでも最速記録には「天井がある」理由は?

[ 2023年5月2日 16:22 ]

エンゼルス・大谷翔平(撮影・会津 智海)
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 スポーツイラストレイテッド誌のトム・ベデューチ記者が1日(日本時間2日)、メジャーで百マイル超えの直球がこの4年間で飛躍的に増えたと報じている。

 2010年、当時レッズのアロルディス・チャプマンがデビューする時、話題の100マイルを一目見ようと外野席のファンがブルペンの周りに押し寄せた。しかし過去4年で100マイル超えの直球が19年のトータル1056球から22年の3348球へと増え、目新しさ、珍しさはなくなったという。

 急増の理由は生体力学/バイオメカニックスの成果だ。この分野のエキスパートであるアメリカン・スポーツメディシン・インスティチュートのグレン・フライシグ氏は「メジャーリーグからリトルリーグまで、投手のメカニックは生体力学によって向上している。身体全体を使って力を最大化し良いメカニックで投げることで、球速が増している」と指摘する。

 今では、メジャーの3分の2以上の球団が生体力学の専門家を雇い、専用の施設を備えている。おかげで17、18年は百マイル台の投手はメジャーで10人前後だったのに、今では25人を超えている。例えばホワイトソックスのグレゴリー・サントスはドミニカ出身で15年に16歳でレッドソックスと契約した。2年後ジャイアンツにトレードされた時は平均93マイルだった。しかしそこからどんどん球が速くなった。21年には平均で97・7マイル、ただしステロイドで陽性反応が出て出場禁止処分を食らう。22年には平均で98・8マイルも出た。それでもジ軍は12月に40人枠から外し、ホワイトソックスにトレードした。

 サントスは先日4月22日のレイズ戦で102・3マイル、103・1マイルと同球団の最速記録を更新し、今季は13試合で防御率1・88と活躍している。興味深いのはこの流れで行くと、投手の球はいったいどこまで速くなるのだろうかということだ。

 しかしながらフライシグ氏は「ガラスの天井がある」と釘を刺す。ある段階で見えない障壁に阻まれ、それより先に進めなくなる。その障壁とは、肘の靭帯や肩の回旋筋腱板が持ちこたえられないこと。強く腕を振り続けるには、腕の部位をつなぐ靭帯や腱が支えないといけないが、靭帯や腱そのものを強化するのは難しく、生体力学的には既に限界を超えているそうだ。ゆえに人間の力ではこれが限度という頂上付近に、複数の投手が群がることになると専門家は考えている。

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