侍ジャパン担当キャップが見た宮崎合宿の収穫と課題 ダルの影響力、未知数なメジャー組との連係

[ 2023年2月28日 05:00 ]

侍ジャパン強化合宿 ( 2023年2月27日    サンマリン宮崎 )

合宿を打ち上げ手締めする(左から)ダルビッシュ、佐々木朗ら侍JAPANの選手たち(撮影・岡田 丈靖)
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 スポニチの侍ジャパン担当キャップの神田佑記者(39)が、強化合宿で見えた収穫と課題を深掘りした。

 【収穫】最大の収穫はダルビッシュの合宿参加だろう。大リーガーで唯一宮崎に来た「生きる教材」は助言を惜しまなかった。日本ハム時代には、助言した後輩に「オフにやってみます」と返答された後、結局取り組んでもらえないケースが多くあったと話していたが、この合宿では若手投手陣が即座に実践。佐々木朗は課題としていたスライダーの変化量が格段に増え、25日の壮行試合では今宮から三振を奪った。データが少ない「新球」は、相手にとって脅威。技術面だけではない。緊迫感が漂う過去の日本代表とは一線を画した年齢の垣根を越えたコミュニケーション。代表になじめなかった宇田川を溶け込ませたのも、大きな功績だ。

 各選手が今季に向けた取り組みでも成果が見えた。WBC初戦となる3月9日は、本来ならオープン戦期間中で大事な確認作業の時期。今回はそれをすっ飛ばして真剣勝負に入ることになる。高く上げていた左足をスライド気味にした山本は、26日の壮行試合で3回39球で2安打2失点(自責1)。新たなフォームを不安視する声もある中で手応えを深めた。打者では山川、山田が新しい打撃フォームに取り組み、まだ無安打ながら、状態は上がりつつあるようだ。

 足の「スペシャリスト枠」で招集した周東も存在感を示した。26日は代走で出塁した5回に同点、9回に勝ち越しにつながる好走塁。どうしても1点が欲しい時の「切り札」として機能する。守備面では外野手の鈴木が左脇腹の張りを発症した中で、一、三塁に加えて左翼も守れる岡本和が練習や試合で準備を重ねたことも、前向きな材料と言える。

 【課題】まず、内外野の連係は未知数だ。5人中3人が名を連ねた大リーガーの外野手の合宿参加がかなわず、サポートメンバーを招集。別のチームから集まる代表で、連係を試すことはより重要だ。しかし、大リーガーが出場できるのは規定により本番まで2試合しかない。特に日本語でのコミュニケーションが困難なヌートバーはNPBでのプレー経験がなく、いわゆる「来てみないと分からない」状況。ロースコアの展開が多い国際大会で「1点を防ぐ」内外野の連係は勝敗を分ける。

 WBC使用球は、投球以外でもミスを招いた。野手の送球だ。合宿前に遊撃の名手、源田は「ツルツルしている印象」と、捕手の大城卓は「縫い目が低くて滑る感じがする」と語った。一球一球大きさが違うように感じる選手も。25日の壮行試合では周東が、26日は村上が悪送球して失点に直結した。練習を重ねて違和感は解消されつつあるが、1点を争うギリギリの場面こそ、指先の感覚の違いがミスを呼ぶ懸念はある。

 ダルビッシュが「十何年やっているメジャーリーガーでもうまく扱えない選手ばかり」と語る使用球。投手では松井裕、宇田川、高橋奎らが苦しんでいた印象だ。特に昨年11月の強化試合でメンバーに入らなかった松井裕は適応を気にするあまり投球フォームを崩した。合宿中に踏み出す右足の着地点を変える「突貫工事」を行ったが26日の壮行試合では抜け球が目立った。左腕で唯一の救援の専門職。合宿最終日にも手締めの後、バスに乗る直前まで「プライオボール(重さの違う6種類のボール)」を使いながらダルビッシュに助言を受け、修正に励む姿があった。

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