今季限りで引退のヤクルト嶋が印象に残ったのは「星野監督と初めて会った時…」

[ 2022年10月2日 08:00 ]

引退の記者会見をするヤクルトの嶋基宏捕手
Photo By 代表撮影

 意外だった。きっとその場にいた記者の誰もが予想しなかった答えだっただろう。ヤクルト・嶋が28日に引退会見。16年間のプロ野球人生で印象に残ったシーンを問われた時だった。

 「星野監督に初めて会った時の恐怖心が僕の野球人生で一番衝撃的だったかもしれない…」

 プロ野球選手会の会長も務めた名捕手が挙げたのは、自分のプレーではなく、闘将との初対面だった。

 11年から4年間楽天の監督を務めた故・星野仙一氏。現役時代は闘志むき出しの投球スタイルから「燃える男」と呼ばれ、監督になってからも「闘将」と呼ばれた。岐阜県出身の嶋は「僕が小さい頃は中日の試合をよく地元で見ていたので、イスを蹴り上げたり…。その監督が目の前にいるというだけで、僕にとっては身が引き締まる思い。どきっとしていました」と振り返った。

 その星野監督の就任1年目に東日本大震災が発生。「見せましょう、野球の底力を」のスピーチは日本中に勇気を与えた。だが、球界の先頭に立ち、復興のシンボルとなったことで、人知れず苦しんだ。
 「自分自身、あの言葉が自分にとって凄いプレッシャーになって、非常に苦しんだ時期もあった。2013年の優勝でそれが全て肩から荷が下りたのは事実」

 13年に田中将とのバッテリーを中心に、楽天球団創設初のリーグ優勝と日本一に貢献した。「野球には人を喜ばせたり感動させたりする力がある」。東北のファンに感動と歓喜を与えた姿は、闘将とはスタイルは違えど、闘う男だったと思う。(記者コラム・青森 正宣)

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2022年10月2日のニュース