【内田雅也の追球】好守で投手救った阪神の零封 貧攻だが「嘆き」の季節は過ぎた 勝利がすべての10月

[ 2021年10月7日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-0DeNA ( 2021年10月6日    横浜 )

<D・神24> 8回無死一塁、佐野のゴロをさばき一塁走者・桑原にタッチする木浪(撮影・大森 寛明)
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 今はもう、勝利こそすべてだ。どんなに不格好でも結果である。阪神はとにかく勝った。

 打線は依然として低調だ。4番・大山悠輔は好機で3度凡退。4打席で計7人の走者が残塁、立ち往生させた。8回表には佐藤輝明に代打・島田海吏を送ってバントさせ、梅野隆太郎でスクイズを試みたが失敗。欲しい追加点が奪えなかった。結局、メル・ロハス2ランの2点だけだった。

 10月に入って5連勝だが、得点(カッコ内は安打)を順に記す。5(5)、3(6)、1(7)、5(9)、2(8)。1試合平均にして3点(7安打)と寂しい。

 ただし、もう10月である。「打てない」などと嘆いている時ではない。

 「10月の野球は」と1980年代、ヤンキースの主軸打者だったデーブ・ウィンフィールドが語っている。「それ(野球)がすべてだ」。

 野球だけに没頭する総決算の日々という意味だろう。大リーグの10月はプレーオフやワールドシリーズの月だが、優勝争いのシーズン終盤にも通じる。

 そんな集中力を発揮、持続している。10月5連勝の支えは投手陣に加え守備陣である。連勝中、無失策で通している。

 リーグ最多のチーム失策80個は143試合換算で89個。一昨年102個、昨年80個(143試合換算101個)だから、随分と改善されている。

 この夜は幾度も美技があった。1回裏先頭、一、二塁間ゴロをジェフリー・マルテが好捕。不安な立ち上がりを救った。3回裏2死一塁では糸原健斗が一、二塁間ゴロを回り込み一塁で刺した。打者・佐野恵太の右寄りシフトも奏功した。6回裏先頭は近本光司が中堅左後方への大飛球を好捕した。左打者の切れる打球、左への「ハマ風」と難しい飛球だった。

 8回裏無死一塁で木浪聖也がボテボテ二ゴロを一塁走者にタッチ―一塁送球の併殺に仕留めた。9月21日中日戦で似たゴロを判断ミスしていた。名誉挽回でやり返した点が素晴らしい。

 初回を除き毎回7安打を浴びながら6回無失点で勝利投手となった西勇輝が「仲間の守備、梅野のリード、みんなでつかんだ勝利」と言った。試合前の円陣でロベルト・スアレスが「1位になるには勝ち続ける必要がある。一体感は力を生む」と話している。球団公式インスタグラムで公開されていた。ヤクルトが負けないのならば、勝ち続けるまでである。

 「仲間」や「一体感」を感じる守り勝ちではないか。嘆く必要などないだろう。 =敬称略= (編集委員)

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2021年10月7日のニュース