新庄劇場!引退から14年、48歳がトライアウト最終打席でタイムリー「球が止まってた」

[ 2020年12月8日 05:30 ]

トライアウトの第4打席、左前適時打となる左前打を放ち、ジャンプして喜ぶ新庄氏 (撮影・白鳥 佳樹)
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 戦力外となった選手らを対象とした12球団合同トライアウトが7日、神宮球場で行われ、15年ぶりの現役復帰を目指す元日本ハムの新庄剛志氏(48)ら56人が参加した。シート打撃形式で行われ、新庄氏は第4打席に左前適時打を放つなど3打数1安打1四球。守備では一塁から三塁、二塁、本職の中堅と動いた。前例のない挑戦を終え、タイムリミットを6日間と設定。よみがえった「新庄劇場」の行方は――。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け無観客、場所は非公表だったはずが、神宮球場周辺には多くのファンが集った。近隣のビルから見つめる人の姿も。「新庄さ~ん!」。黄色い大歓声が場外から注ぐ。ハイライトは、走者一、二塁で迎えた第4打席。前ヤクルトの左腕ジュリアスのチェンジアップを捉えた。左前への適時打。真っ白い歯をこぼし、両手をポンと叩いた。

 「走者がいてくれてアドレナリンが出て、ボールがよく見えた。止まってたんじゃないというくらい」

 打撃の神様と称された元巨人・川上哲治氏の「ボールが止まって見えた」と重なる言葉。中日を下し、日本シリーズを制して涙した06年10月26日の第5戦以来、5156日ぶりの安打だった。

 昨年11月に突如、現役復帰の意向を表明した。「正直ちょっと無理じゃないかと思う時期があった。けど、みんなの応援があって、今日この場に立てたことに感動した」。代名詞のフルスイングではなく、コンパクトに振り抜く打撃。阪神時代の師、元打撃コーチの柏原純一氏の指導も受け、磨き抜いてきた。

 守備機会は訪れなかったが、一塁、三塁、二塁と守備位置を変えた後、慣れ親しんだ中堅へ。シートノックは三塁で受けた。「(三塁で出た)阪神のデビュー戦を思い出したかったし、いろいろ守れるよ、と見せたかった」。二回り以上も年下の選手とも交流。外野守備で元阪神の田上に助言し、現役時と同モデルのオールドヒッコリー社製のバットは前オリックス・白崎にプレゼントした。投手交代間のボール回しでは、無人のスタンドにボールを投げ入れる場面も。「ファンが見てくれているという、イメージです」。後押ししてくれた声の存在を、常に胸に秘めていた。

 「1年間、自分に勝って努力すれば、こうして結果を出せると。みんなに少しでも分かってもらえたらうれしい」。日米台の44チーム、91人のスカウトの目が注がれた。「6日間でオファーが来なかったら、野球はもう終わりです。きっぱりやめます」。球場を引き揚げる際には、100人以上のファンに見送られた。平成から令和に変わっても、なお多くの夢と勇気を振りまいた新庄劇場。アンコールの拍手は届くのか。(後藤 茂樹)

 ◆新庄 剛志(しんじょう・つよし)1972年(昭47)1月28日生まれ、福岡県出身の48歳。西日本短大付から89年ドラフト5位で阪神入団。01年からメッツ、ジャイアンツと大リーグで3シーズンプレーし、04年からは日本ハムに所属。06年限りで現役を引退した。NPBでは通算1411試合で打率.254、205本塁打、716打点、73盗塁。ベストナイン3度、ゴールデングラブ賞10度。右投げ右打ち。

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