“虎党が打たせた”阪神・近本 お返しの先頭打者弾「拍手や歓声でいい緊張感あった」

[ 2020年7月11日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神3-2DeNA ( 2020年7月10日    甲子園 )

<神・D(4)>初回無死、近本は右越えにソロ本塁打を放ち、ナインとタッチをかわす(撮影・坂田 高浩)
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 甲子園にファンが、虎党が帰って来た――。新型コロナウイルス感染拡大の影響で無観客開催を続けてきたプロ野球は10日から有観客試合を実施。阪神は、近本光司外野手(25)が初回にファンの声援が後押ししたような右中間席最前列に飛び込む“先頭打者弾返し”となる同点の2号ソロで反撃を呼び、DeNAに逆転勝ち。5回裏降雨コールド勝ちで連勝を4に伸ばした。

 こんな劇的なことが起こるのも、また野球だ。甲子園に4945人の虎党が戻ってきた「歴史的な日」。「入れー」とファンの声援が後押しした近本の打球は、右中間席の最前列ギリギリに本当に飛び込んだ。

 「打った瞬間は三塁までいく意識で走っていましたが、入ってくれてよかった」

 DeNA・梶谷の先頭打者弾で1点を先制された初回。2ストライクと追い込まれた状況で相手先発・大貫のスプリットをすくい上げた。本来なら浜風で失速する打球のはずが、この日は右翼から左翼方向に風は吹いておらず、声援という“神風”に最後、一押しされた。6月21日巨人戦での先頭打者本塁打以来、13試合ぶりの2号ソロとなる「お返し弾」。貴重な反撃ののろしとなると同時に、自身3試合、11打席ぶりの安打でもあった。

 「久しぶりに観客が入っての試合だったので、拍手や歓声でいい緊張感があった。今日来てくれたファンの方々に来てもらってよかったなと思ってもらえるようなプレーができてよかった」

 登場曲を背に打席に向かうと、ファンの拍手とメガホンをたたく音がスタジアムに響いた。この日を待ち望んでいたファンの声援は、しっかりと近本にも届いた。打率1割台(・180)と数字的にはリードオフマンとして物足りないが、流れを変える力を近本は持っている。矢野監督も「近本の(本塁打)で一気にムードが高まった」と勝利につながる一発を称賛した。

 近本には生観戦での忘れられない思い出がある。小学生の頃、地元の淡路島から初めて甲子園に訪れた巨人戦でジョージ・アリアスが本塁打を放った。その時の感動は「今でも忘れない」といい、その経験から「来た人を喜ばせたい」という思いを持って、グラウンドに立っている。コロナ禍で、この日訪れたファンはまだ5000人にも満たないが、うれしいプレゼントになったはず。声援を力に変えて――。チームとともに近本の逆襲もここから始まる。 (長谷川 凡記)

 《両軍で先頭弾は15度目》阪神―DeNA戦は梶谷(D)と近本(神)が初回先頭打者本塁打。両チームで出たのは19年6月21日の荻野(ロ)と山田哲(ヤ)以来15度目。甲子園では78年6月7日の高木守(中)と中村勝(神)以来42年ぶり2度目。近本は6月21日巨人戦の1号に続き2本連続の初回先頭打者弾で、通算3本目。

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