西勇輝をつくった思い出の味 プロ入り後も毎年訪問 阪神入団決定翌日にも

[ 2018年12月26日 08:00 ]

母校・菰野高近く ドラフト指名の瞬間迎えたお食事処「おかずや」

高校3年夏の甲子園に出発する直前の磯子さん(左)と西
Photo By 提供写真

 オリックスから国内フリーエージェント(FA)権を行使し阪神に移籍した西勇輝投手(28)が、菰野高時代から現在に至るまで、オフになると必ず訪れる思い出の味がある。奥山良太郎さん(71)、妻・磯子さん(64)、娘の嶋康代さん(42)一家が同校の近くで営むお食事処「おかずや」。西の胃袋をつかんだ絶品メニューと、一家との深い絆を追った。

 母校・菰野高から徒歩5分の距離に、創業35年のお食事処「おかずや」がある。野球部の戸田直光監督(56)は、店主の奥山一家と30年来の付き合いがある常連客。週末の練習や長期休暇期間になると弁当を仕出していたことがきっかけで、西も入学後にその味を知った。磯子さんは当時を懐かしそうに振り返った。

 「勇輝は特にからあげ丼を気に入ってくれていました」

 人生の大きな節目を迎えたのも、この場所だった。3年時のドラフト会議。指名されるか否かが微妙なラインだったため、学校側が会見場を設けることはなかった。そこで、待機場所として選ばれたのが「おかずや」。当初、西は練習するつもりでいたが、戸田監督に呼び出され、即席で店内に準備されたCS放送を見守った。決定の瞬間を迎えたのは学校ではなく、なんと近所の食事処……。地元では、よく知られたエピソードだ。

 プロになってからは毎年オフ、アポなしで店に訪れている。イチオシは、からあげ定食(850円)。醤油ベースの味付けで、しょうがの風味が口の中にほんのりと広がるシンプルな味付けだ。

 お気に入りは、それだけではない。7年前のオフ。同校の後輩で当時、中日の投手だった関啓扶氏が頬張る一品に目がとまった。「これはうまそう」と直感。以後はとんてき定食(1200円)も頼むようになった。今年はすでに3回も訪問。阪神に入団決定した翌日にも訪れており、思い出の味で至福のひと時を過ごした。

 高校時代からよく、奥山さん夫妻の孫・嶋爽汰さん(現高校1年)の遊び相手を務めていた。今でも店に顔を出した際はキャッチボールをするのがお決まりだが、爽汰さんは高校進学を機に勉学に専念するため野球を辞めた。報告を受けた西は「そうちゃん、きちっと大学行くと決めたなら頑張れよ。野球は趣味でやったらいいんだから」と背中を押した。文字通りの、良き兄貴分。今年の10月には学習用具をプレゼントするなど、思いやりの心も忘れてはいない。

 「阪神では納得のいく投球をしてほしい。勝ち負けよりもいい内容でチームに貢献してほしい」

 磯子さんは一家を代表して、エールを送った。「おかずや」の美味は西にとっての思い出の味。お世話になってきた人々の思いも力に変えて、阪神でも躍動する。(長谷川 凡記)

続きを表示

この記事のフォト

2018年12月26日のニュース