【群馬】前橋工 あのスクイズが決まっていれば…セオリー重視が裏目に

[ 2018年6月20日 08:00 ]

第78回大会準決勝   前橋工2―3熊本工 ( 1996年8月20日    甲子園 )

<前橋工・熊本工>敗戦に涙ぐむ前橋工・斉藤
Photo By スポニチ

 【スポニチ社員が選ぶわが故郷のベストゲーム】この夏、全国高校野球選手権大会は100回目。ふるさとチームの甲子園での活躍に熱くなった記憶を、北北海道から沖縄まで、今夏の代表校数と同じ56人のスポニチ社員がつづります。

 甲子園が一番面白いのは、準々決勝だよ。そんな生意気なことを言いながら、日程を組んだ。96年夏、野球部を引退したマネジャー仲間3人で企てた高校野球観戦ツアー。ささやかな、引退式のつもりだった。夜行バスで大阪まで出て、試合を見て1泊。翌日は準決勝を途中まで見て帰ろう。決勝はまあ、大味になることが多いから。

 左腕・斉藤は剛腕の絶対エースとして君臨し、守備の要の捕手・赤城が主将兼4番。「ザ・高校野球」のストロングスタイルで県代表となった前橋工が、そこにいた。準々決勝を2つのスクイズで勝ち上がり、74年以来となる4強入り。♪坂東太郎の〜、で始まる校歌を一緒に歌った。

 続く準決勝。斉藤は4回2死から3安打で3失点したが、それ以外は完璧な投球内容。けれど、こだわり過ぎたセオリーが裏目に出る。2回に2度、6回に1度スクイズを試みるも全て失敗。勝負に「たられば」は禁物だが、あのスクイズが1つでも決まっていれば、と思いながら熊本工の校歌を聞いた。

 故郷のチーム、しかも県大会で敗れた相手の熱戦を目の当たりにして興奮冷めやらぬ私たちは、準決勝も最後まで観戦。けれど貧乏JKに延泊の選択肢はなく、後ろ髪を引かれながら帰郷した。そして、松山商―熊本工の決勝戦。「奇跡のバックホームで勝敗が決すると知っていれば…」と思っても後の祭り。今となっては苦くもほほ笑ましい、青春の思い出となった。

 同じ時期に甲子園を目指し、あの夏を最後に引退した選手たちは、今年みんな40歳。100回の歴史から見れば一瞬だけれど、最後の最後に伝説に残る激闘を見せてくれた彼らを、今でもずっと尊敬している。

 ◆金子 しのぶ(東京本社スポーツ部)群馬県館林市出身。太田東12期生。高校時代の監督の教え「人と同じじゃ普通だよ」を今も忠実に守る。

 <群馬データ>

夏の出場 70回(通算69勝68敗)

最高成績 優勝2回(桐生第一=1999年、前橋育英=2013年)

最多出場 桐生(14)

最多勝利 桐生第一(13)

出場経験 14校、うち未勝利4校

続きを表示

この記事のフォト

2018年6月20日のニュース