【石井一久の大分析 サヨナラ打編】ボール球を捉えた大谷の決断力

[ 2016年10月26日 09:20 ]

SMBC日本シリーズ第3戦 ( 2016年10月25日    札幌D )

<日・広>延長10回2死二塁、ボールゾーンの内角球をはじき返しサヨナラ適時打を放つ大谷
Photo By スポニチ

 日本ハム・大谷翔平投手(22)の劇的なサヨナラ打を生んだのは、「ストライクゾーンを広げる勇気」だったとスポニチ本紙評論家の石井一久氏(43)はみた。黒田―石原バッテリーの「リスク回避のため」の内角球の使い方など広島ペースで進んだ試合。石井氏は、勝利へ息を吹き返した日本ハム・中田の2点打にも本来のしばき上げるスイングで復調を感じ取った。

 サヨナラの場面。広島バッテリーを責めることはできない。10回2死二塁。大谷に対して1ボール2ストライクとなった時点で、バッテリーは「ボール球3球を投げられる」という意識でいたはずだ。打たれた4球目は内角低めのボールゾーン。「もっと手の届かないところに投げるべき」と言うことはできない。これをはじき返した大谷の勇気を称えるべきだ。

 2ストライクとなった時点で、大谷は「多少のボール球でも振る」という考えに切り替えてストライクゾーンを広げた。その上で次の1球をどう考えるか。「絶対にストライクゾーンには来ない」という予測をつけたはずだ。その先の意識が勝負を分ける。「ボール球は振らないように」と考えるか「ボール球でも打ちにいく」とするか――。もし4番の中田につなごうとか、ボールを見極めようという意識が強ければ、ストライクゾーンからボール2個分くらい低い球に反応はできなかった。ゾーンを広げ、積極的に打つ決断が劇打を生んだとみている。

 初回、黒田の外角ツーシームを左翼線二塁打。4回の内角高めカットボールを右中間に運んだ二塁打もバットの芯ではない。だが、自分のスイングをするという強い決意で、腰の入ったスイングをしているから安打ゾーンに打球が飛んでいく。コースに逆らわずとか、ストライクゾーンを絞ってという限定した考え方では迷いが生じる。第1、2戦、そして3戦目の中盤まで日本ハム打線は、どこか各選手が自分の色を出し切るような、思い切りが感じられなかった。大谷の5打席を通じたスイング、姿勢を見て、チームも大切なものが何かを感じたはずだ。(スポニチ本紙評論家)

続きを表示

2016年10月26日のニュース