大谷 黒田から魂受け取った「ほぼ全球種見せてくれた」

[ 2016年10月26日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ第3戦 ( 2016年10月25日    札幌D )

<日・広>サヨナラ打を放ち、ナインに祝福される大谷
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 日本ハムの大谷翔平投手(22)が25日、第3戦に「3番・DH」で出場し、3―3で迎えた延長10回2死二塁から右前にサヨナラ打を放った。今季限りでの現役引退を表明し、初対決となった広島・黒田博樹投手(41)から2本の二塁打を放ち、最後は3時間51分の死闘に決着をつけた。日本ハムは本拠地の札幌ドームに移っての試合でシリーズ初勝利を挙げ、対戦成績を1勝2敗とした。

 延長10回2死二塁。1ボール2ストライク。「長打はいらない」。大谷は内角か低めのフォークを待った。狙い通り、大瀬良が内角に投じた147キロ直球を捉えた。打球が一、二塁を抜ける。大舞台で自身2度目のサヨナラ打。大谷はヘルメットを投げ捨て、ウオーターシャワーを浴びた。

 1点を追う8回2死二塁では敬遠気味に歩かされ、中田が一時逆転の2点打。10回は西川の二盗で再び一塁が空いたが「前の打席で中田さんが打っているから、僕で勝負すると思った」と振り返る。第1戦では敗戦投手に。その無念と悔しさは尋常ではなかった。

 「僕のふがいない投球で負けた。取られた分の倍くらいを取り返す気持ちだった」。負ければ王手をかけられる窮地をバットで救った。

 今季限りでの引退を表明している黒田と初対決した。「ほぼ全球種を打席で見ることができた。間合いやボールの軌道が勉強になった」。初回1死一塁は初球のツーシームを叩き、左翼線二塁打。4回は内角のカットボールを強振し、右中間へ2打席連続の二塁打を放った。6回1死走者なしで迎えた3度目の対決。フォークで左飛に打ち取られ、黒田はここで両足の張りを訴え、マウンドを降りた。「それまで全くそういうそぶりを一切見せなかったのは凄い」。大谷にとって憧れの存在だ。かつて大リーグ移籍前のダルビッシュ(現レンジャーズ)が前田(現ドジャース)の打席で全球種を投げ、マウンドからエースの投球術を伝えたことは有名だ。大谷はカットボール、ツーシームは投げないが「今後必要な球種。(自分のイメージに)軌道があるのとないのでは違う」と感謝した。日米通算203勝を誇るレジェンドの投球を目に焼き付けた。

 10月16日のCSファイナルS第5戦(札幌ドーム)の9回にDHから救援し、プロ野球最速を更新する165キロを連発して日本シリーズ進出を決めた。その翌日の札幌市内の合宿所。オフで誰もいないトレーニングルームに大谷の姿だけがあった。エアロバイクによる有酸素運動だけでなく、バーベルを担ぎ、スクワットで下半身をいじめ抜いた。前日も広島から札幌へ戻るやいなや、ウエートトレーニング。大舞台でのサヨナラ打は、その努力の結晶だった。

 敵地で連敗を喫し、本拠地での最初の試合で劇的なシリーズ初勝利。大谷はこう言った。「2球団しかここ(日本シリーズ)に来られない。緊張してても仕方がない。明日(26日)につながる。全員で頑張りたい」。北の大地から二刀流の逆襲が始まった。 (柳原 直之)

 ▼日本ハム・栗山監督(大谷と黒田の対戦について)素晴らしかった。感じるものがあった。その(負傷降板の)前から、どこかおかしい感じに見えた。でも、(大谷)翔平まで我慢したように見えた。何かメッセージを送ってくれたと思う。もう一回、クロと対戦したい。

 ≪22年ぶりサヨナラ&猛打賞≫DHで先発出場した大谷(日)が延長10回にサヨナラ安打。1、4回にも安打しており、サヨナラを含む猛打賞は74年第1戦の高木守(中)、94年第4戦の佐々木(西)に次ぎ22年ぶり史上3人目だ。また大谷は第1戦で先発登板。同一シリーズに投手と野手で先発出場したのは、54年大島(中)に次ぎ62年ぶり2人目。同一シリーズに登板した投手のサヨナラ安打は58年第5戦稲尾(西鉄=本塁打)、86年第5戦工藤(西武)に次ぎ3人目(過去の2人は登板時)。

 ≪22歳3カ月は2番目の若さ≫大谷は22歳3カ月。サヨナラ打を記録した打者では、前記稲尾の21歳4カ月に次ぎ2番目の若さ。東映時代の62年第5戦で打った岩下の22歳7カ月より若い球団最年少となった。

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2016年10月26日のニュース