【内田雅也の追球】赤く染まった甲子園に思う 猛虎も闘魂宿る“赤”復活を

[ 2016年9月15日 10:00 ]

<神・広>7回、阪神ファンの前で赤いジェット風船をあげる広島ファン

セ・リーグ 阪神4―6広島

(9月14日 甲子園)
 阪神は監督・金本知憲をはじめ、ファンも期待するのは来季に向けた明るい展望やその兆候である。だが残念ながら藤浪晋太郎は相変わらずだった。問題は四球だ。

 「4安打で3点」と敗戦後、投手コーチ・香田勲男が言った。「安打1本で点を取られている。四球だね。カウントを整えるのに苦労していた」

 同じ失敗の繰り返しである。特に立ち上がりが悪過ぎる。1回表先頭の田中広輔に3連続ボールから四球を与え、制球難から2点を失った。この回だけで37球を投げた。

 6回表の失点も実は立ち上がり難と同じ症状である。5回終了でグラウンド整備のため、数分間中断となる。整地されたマウンドにのぼり、また先頭の丸佳浩にストレートで四球を与えたのだ。

 藤浪のイニング別失点をみると、1回が抜きんでて多く25点を数える。次が2回の10点。3番目が6回の9点なのだ。

 1回7失点降板となった8月30日・中日戦(ナゴヤドーム)でテレビ解説に訪れていたOBの江夏豊は「立ち上がりはどんな投手も難しい。ブルペンでの球数を変えるなど、工夫をしなければいけない」と話していた。あれから2週間、プロとして工夫はしたろうが、効果は見えなかった。

 さらに8回表、逆転を許したサターホワイトも四球がきっかけだった。チーム与四球は477個で、セ・リーグ最多だ。制球難か、逃げているのか、配球が難しいのか。四球減らしは投手陣再建の大きなテーマだ。

 以下は余談である。この夜の甲子園球場には異様な光景が広がっていた。入場券は完売。優勝の瞬間を見届けようと広島ファンが前売り券を求めていた。満員の観客席の半分、いや半分以上が広島ファンだった。阪神としては哀(かな)しく、虚(むな)しい超満員だった。

 赤く染まったスタンドを眺め考えた。広島がチームカラーを紺から赤に変えた1975年、チームは初優勝した。

 それよりも以前、阪神も51―57年、帽子の「O」(大阪タイガースの頭文字)やストッキングのラインに赤を入れていた。猛虎の、燃える闘志の赤だった。藤村富美男が奮闘していた時代だ。

 来季、ユニホームにあの赤を復活させてみてはどうか。異様な光景が目に、四球と秋雨が身に染みた夜、妄想が膨らんだ。金本が望む反骨心や闘魂が宿るかもしれない。 =敬称略= (スポニチ本紙編集委員)

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2016年9月15日のニュース