ヤクルト川端の名人技カット打法 2ストライクでも「ワクワクする」

[ 2016年2月5日 09:10 ]

内角球をカットする時のミートポイントのイメージを実演する川端

 難しい球をファウルでカットし、甘い球をヒットゾーンに飛ばす。投手有利のカウントでも、ヤクルト・川端の心理状態は普通の打者とは違う。

 「2ストライクに追い込まれたらワクワクしますね。安打は考えていない。ファウルで粘ってフルカウントにすることしか考えていない」

 昨季は2ストライク後の打率がリーグトップの・270。フルカウントでは・400に上がる。秘けつは投球を極限まで体に引きつけてファウルする「カット打法」だ。2ストライクに追い込まれると、ミートポイントはそれまでの腕が伸びる位置から、50センチ以上も後ろに変わる。球筋を最後まで見極め、腕を畳んだ窮屈な状態でバットに当てる高等技術。DeNAの捕手・黒羽根は「ミットに吸い込まれると思ったら球が消えた」と驚きを口にしたことがある。

 一朝一夕で習得した技術ではない。参考にしたのは同僚の青木(現マリナーズ)だった。ベンチを温めていたプロ4年目の09年。青木が手元まで球を引きつけてファウルで粘る姿を見て、「簡単に凡打しない方が投手も嫌がる」と打撃練習で三塁側のファウルゾーンへ打つ練習を取り入れた。最初は打ちたい気持ちがはやり、前に突っ込む形の内野ゴロが続いた。球を引きつけ、ミートした後に手首を返さないことを心掛けると変わった。「2年前(14年)に手応えをつかむようになった」。カットボール、ツーシームと打者の手元で変化する軌道の球もカットできるようになった。

 内角の厳しい球もバットを内側から出して右肘を抜くような感覚でファウルを打ち続けると、新たな技術が身についた。詰まりながらも左手で球を押し込む。左前に落ちる安打が増えた。杉村打撃コーチは「バットコントロールが天才的。カットでファウルするのと安打を打つのは同じぐらい難しい」と評価する。

 昨年は195安打を放ち、打率・336で首位打者を獲得。「カットの精度を高めれば打率ももっと上がると思う」。自己犠牲の精神で身につけた技術で、連続首位打者を狙う。 (平尾 類)

 ≪10球以上粘った打席は両リーグ2番目8度≫昨季の川端は、1打席あたりの平均球数が4・00球。両リーグの規定打席到達者54人の最多は中島(日)の4・32球で、川端は29番目とほぼ平均値だった。ただし川端が10球以上粘った打席は両リーグ2番目の8度と多く、2打数2安打6四球と全て出塁。10球以上で出塁率10割は新井(広=1安打)、大島(中=1安打1四球)と並び両リーグで3人だけだった。なお、公式戦での1打席最多球数は19で、47年に松井信勝(太陽)、12年に明石(ソ)がマークしている。

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