“お告げ”あった…西勇輝「何かを成し遂げる年」にノーヒッター

[ 2013年1月15日 14:08 ]

昨年10月8日、1四球のみの準完全試合で史上76人目のノーヒットノーランを達成した西勇輝

野球人 西勇輝(上)

 昨年の正月。三重県鈴鹿市内の椿大神社を参拝した際、オリックス・西は山本行恭宮司からこんな言葉をもらった。

 「何かを成し遂げる年だ」

 当時21歳の青年にはまるで見当もつかなかった。「どんなことが待ち受けているんだろう。最多勝はまだまだ早いし、(最優秀)防御率も自信がないし…」。昨季シーズン最終戦。10月8日のソフトバンク戦(ヤフードーム)で宮司が示した「何か」は起こった。

 何もかも普段通りだった。西は登板日に必ず同じパンツをはく。この日もそうだった。ボクサータイプのパンツは黄、黒、緑、白のチェック柄。お気に入りの一枚だ。「試合前日の夜にはいて、そのまま球場に行けば勝つんです。たまに汗をかくじゃないですか、夏場とか。朝に着替えて違うパンツをはくと、負けたり引き分けだったり…。勝った時のパンツは全部同じなんですよ」。これもこだわりだという「ドラえもん」のDVDを見てから寝床についた。

 登板直前、調子はさっぱりだったという。「全然でしたね。ブルペンはめちゃめちゃ良くなかったですから」。ただ、西の場合、ブルペンの出来が必ずしも試合に直結しない。事実、昨季一番の出来でマウンドに上がったのは6月22日の西武戦(大宮)だった。しかし、川端の手痛いエラーが絡んだとはいえ、2回に3点を許し、試合は引き分けに終わった。

 入団3年目、11年の10勝から一転、波に乗れなかった昨季。8月には右肩痛で戦線離脱した影響もあって、最終戦の前まで7勝(3敗)にとどまっていた。「ふがいない成績だった。何とか来年につながる投球を」と願って最終戦のマウンドに向かった。

 そして…。9回を無安打1四球、9奪三振の快投で、5月30日の杉内(巨人)以来史上76人目のノーヒットノーランを成し遂げた。パ・リーグでは00年のエルビラ(近鉄)以来12年ぶりの快挙だった。引退を表明しレギュラーシーズン最後となるソフトバンク・小久保の勇姿を見るために集まったファンで、敵地のスタンドは膨れ上がっていた。究極のアウェーの中で投じた会心の109球だった。

 「小久保さんの引退試合ですし、花を添えないといけない。難しかったです」。19歳年上の大先輩との対決。難しい局面で西はもう一つの「敵」とも戦っていた。

 ◆西 勇輝(にし・ゆうき)1990年(平2)11月10日、三重県生まれの22歳。菰野では3年夏甲子園出場も1回戦で仙台育英に敗退。08年ドラフト3位でオリックス入団。3年目の11年にプロ初勝利を含む10勝。12年10月8日ソフトバンク戦でノーヒットノーランを達成した。通算65試合で18勝10敗1セーブ、防御率2・92。1メートル80、80キロ。右投げ右打ち。

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2013年1月15日のニュース