悔しさ忘れない 秋山ホークスで巻き返しだ

[ 2008年10月8日 06:00 ]

王監督が松中、小久保らナイン全員と握手を交わす

 【ソ0-1楽】恩師に有終の白星を贈ることはできなかった。左かかと痛で出場選手登録を抹消されていたソフトバンク・小久保裕紀内野手(37)が、左足甲骨折の川崎宗則内野手(27)とともに今季最終戦に強行出場。小久保は9回の好機で代打で登場したが、フルスイングも及ばず中飛に終わった。最下位に終わったナインは、この悔しさを胸に新生・秋山ホークスで巻き返しに挑む。

 恩師のために振れる最後のバット。9回1死二塁の場面で小久保は王監督から代打を告げられた。カウント0―2から左かかとの痛みに耐え、フルスイング。2球ファウルを続けた後、田中の136キロスライダーを歯を食いしばって振り抜いたが、中飛に終わった。
 「絶対に最下位で送り出したくなかったのに申し訳ない思いでいっぱい。モチベーションは高かったのにね」
 9月24日の本拠地最終戦。王監督勇退のセレモニーでは、偉大な89番を前にして子供のように号泣した。惜別ではない。「王監督をまた胴上げしたい」という思いで、06年オフに巨人から復帰した。東京に家族を残してホテル暮らしの07年。酒も控えたが、願いは届かなかった。今季はシーズン途中で負傷のために出場選手登録を抹消。情けない気持ちが、王監督の前で涙となって流れた。
 プロ2年目の95年、王監督から「4番」に指名され「足が震えた」。その年、本塁打王に輝いたのは指揮官の「遠くに飛ばせ」という指示に、誰よりもバットを多く振る猛練習で応えた結果だった。その指揮官と少しでも同じ時間を共有したい。負傷者ではただ1人、チームとともに4日に仙台入りしていた。
 左足甲疲労骨折で出場選手登録を抹消されていた川崎も気持ちは同じ。「悔しい。最後にせっかく使ってもらったのに結果を出せずに悔しい」。最終戦で登録されると、7回1死から代打で登場。安打は生まれなかったが、延長12回まで遊撃の守備にも就いた。
 延長12回1死一、二塁の好機では、満身創痍(そうい)のチームで4番を打ち続けた松中が併殺に倒れ、有終の美を飾れなかった。「今、言葉が見当たらない。何も言えない。凄く残念」。愛弟子たちが口にする「勝利」へのこだわり。それこそが王監督から学んだもの。その精神は永遠に息づいている。

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2008年10月8日のニュース