「こいつ」に消された“イチ安打”…

[ 2008年7月30日 06:00 ]

問題のシーン。イチローの足が早かったように見えるそうだ…

 【マリナーズ7―5レンジャーズ】マリナーズのイチロー外野手(34)が28日(日本時間29日)、アーリントン(米テキサス州)でのレンジャーズ戦でヒットを1本損して、日米通算3000安打の偉業達成を逃した。2回の第2打席、一塁へ鋭いゴロを放ち、ベースカバーの投手より一足早く一塁を駆け抜けたかに見えたが、判定はアウト。第4打席に三塁打を放ち、大台へあと1本と王手をかけたが、微妙な判定に怒りを隠せず。歴史的瞬間は29日以降に持ち越された。

「もう近い」イチロー大記録へあと2

 安打を逃し、結果的に偉業達成も幻となってしまった。2回、地をはう鋭い当たりに一塁手デービスが横っ跳び。イチローが必死の形相で一塁を駆け抜ける。ベースカバーの遅れた先発フェルドマンのスライディングした足より一瞬早く、到達したかに見えた。だが、無情にもクロフォード一塁塁審は激しく右手を振り下ろした。
 「微妙じゃないでしょ、あんなの。セーフやん。よう見るな~、あの(塁審の)顔。あ、こいつやったんかって思った」
 メジャー審判歴31年の大ベテランと、よほど相性が悪かったのか。観念しながらも怒りは収まらなかった。同塁審はイチローの正面に陣取り、フェルドマンの足は砂ぼこりとともに完全な死角となっていた。3000安打へ、あと2安打で迎えた一戦。早い回に安打が出なければ、後半は重圧が高まるだけに「回が遅くなればなるほど重くなるからね。だから2打席目のは大きいよね、あの判定は」と最後まで恨み節は消えなかった。
 7回に右翼線三塁打を放った。王手をかけて迎えた9回1死二、三塁では左犠飛だった。貴重な追加点で勝利には大きく貢献したが「それはもう別の問題。基本的に犠牲フライは悔しい。ヒットを打ちにいっているので」と表情は納得しないまま。それだけこの日の大台到達に懸けていた。
 厳しい視線の下には、右足首に痛々しく巻かれたアイシングの氷のうがあった。試合前の打撃練習で自打球を直撃させていた。その後の守備練習に就かなかったのは、37度の猛暑を避けただけではなかった。痛みをこらえての出場、そして激走だった。自ら「誤審」と断定したプレーがセーフなら、一気に偉業を達成していた。クラブハウスでの自律を知るリグルマン監督は試合前に「彼の積み重ねは本当に素晴らしい。最初からこちらでプレーしていても今ごろ、あと2本で3000安打の状況は同じだったのではないか。すぐに見られる」と技術だけでなく、野球に取り組む姿勢に敬意を表していた。
 歴史的瞬間は29日以降に持ち越された。あくまで通過点と強調し続けてきたが、誰よりもイチロー自身がその瞬間を待ちこがれているのも事実。イチローがメジャー8年間で、先発して安打を放つ確率は・805。今度こそ、文句のつけようがないクリーンヒットで決めてみせる。

 ≪城島救ったビッグプレー≫マリナーズの城島が好守で後半戦初の連勝に貢献した。1点リードの8回1死二、三塁のピンチで機転をきかせ、リードの大きい三塁走者を強肩で刺した。リーグ打点王(103打点)のハミルトンを打席に迎えていただけに、ビッグプレーで危機脱出。「背中に当てることもあるが、自分の技術を信じてより走者に近いところに投げた。捕手は誰でもいいと思われるのもしゃくですから」と正捕手の意地をにじませた。

続きを表示

2008年7月30日のニュース