イチロー、二兎追わない人生

[ 2008年7月30日 09:21 ]

 二兎を追って本物になることはできない。日米通算3000安打を達成した米大リーグ、マリナーズのイチロー外野手は、そんな心の声を20年近く前、進路決定の際に聞いている。「勉強と野球、両方やろうとすれば、結局、その両方が死んでしまう。当時はっきりそう思った記憶がある」

 中学3年生当時の成績は、ほとんどの教科で5段階評価の5だったという。進路指導の先生はじめ、周囲は野球と勉強の両立を勧めた。しかし、イチローは猛反発し、多くのプロ野球選手を輩出していた愛工大名電高を選んだ。「野球“だけ”なんてもったいない」。そんな声は周りにあふれた。
 「誰の言葉だったか全然思い出せない。でも中学のときにみんなに“もったいない”と言われて、それは違うんじゃないかと強く思った」。2つの目標を同時に追うと、どちらもが中途半端になる可能性を悟っていた。そのころの直感は的中したことになる。
 やるからには徹底的にという人生観は、だれよりもたくさんヒットを打つ願望に直結する。もっと長打を狙えば、もっと四球を選べば…。そのスタイルに疑問を投げかける意見は少数だが存在する。しかし、天才的なバットさばきとスピード、体の丈夫さなどを最大限に生かそうと考えれば、答えはおのずとヒット数に行き着く。
 1試合平均安打数はオリックス時代の約1・34から渡米後は約1・41へと上がっている。イチローのヒットを追い求める歩みは加速している。(共同)

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2008年7月30日のニュース