被災地勇気付ける 岩隈完封で10勝目

[ 2008年6月16日 06:00 ]

<楽天・巨人>3回2死、木村拓の一ゴロでベースカバーで一塁へ走る楽天先発・岩隈

 【楽天3―0巨人】プロ野球にしかできない復興へのエールがある。楽天のエース岩隈久志投手(27)が15日、巨人打線を7安打に抑える今季2度目の無四球完封。近鉄時代の04年以来、史上初めて2球団での両リーグ10勝一番乗りを果たした。チームの連敗を3で止め、楽天では初となる巨人戦完封は、岩手・宮城内陸地震で被害を受けた東北地方の復興へ、祈りを込めた130球の熱投だった。

 力ない飛球が左翼に上がった瞬間、岩隈はポンとグラブを叩いた。東北を包む重苦しい空気の中、これぞエースの熱投だった。「何とか勝って勇気を与えられればと思っていた。そういう思いはありましたね。勇気づけられるようなピッチングができてよかった」
 試合前には君が代斉唱ではなく、犠牲者に1分間の黙とうがささげられた。余震は収まらず、被害は広がる一方の被災地。それでも左翼席には「頑張ろう東北!!俺達は地震になんか負けない!!」の横断幕が掲げられた。
 だからこそ史上初の地震による試合中止からのスライド登板で、岩隈は力を振り絞った。最速150キロをマークした直球に加え、要所でフォークボールが切れた。4回1死一、二塁から阿部に粘られたが、10球目のフォークで見逃し三振。8回1死一、三塁では小笠原を147キロ直球で二ゴロ併殺打と、巨大戦力を力と技で封じ込めた。昨秋受けた右ひじ遊離軟骨除去手術の影響で、今季は100球前後の投球制限があるが、志願の続投で3月27日オリックス戦以来の無四球完封。「9回は4番からだったし、自分で締めたかった」と言った右腕に、野村監督も「岩隈に尽きるやろ。“最後まで行きます”と力強い言葉をもらった。ますますエースらしくなったな」と賛辞を送った。
 震災に際し、ナインはできるだけのことはしようと声をそろえた。球団、選手会でも試合前に義援金を送ることを決定。あとは懸命なプレーを披露するだけだった。視察した三木谷球団会長が「よくやってくれた。少しでも元気になってくれれば」と話せば、野村監督も「空気が重い中で少しでも明るいニュースが送り出せた。勇気を与えることに少しは力になった」と振り返った。
 4年ぶりの2ケタ勝利一番乗りも岩隈は素っ気なかった。「まさかこんなに早くできるとは思わなかった。でも数字に関して意識はない。ああいうことがあったし、とにかくみんなで勝ちたかった」。球音と歓声が戻った杜の都。95年1月17日、阪神大震災に見舞われた神戸市民を元気づけようとイチローらオリックス・ナインは「がんばろう神戸」を合言葉に同年のリーグV、翌年の日本一を勝ち取った。その思いは岩隈らも同じだ。

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2008年6月16日のニュース